© yoko takeuchi
宝石のような水滴が無数に輝く花びら、また花びらに落ちた水面が作り出す模様……。「“Water and Flowers”series」は写真家・竹内陽子さんが撮影する、花と水をテーマにした写真作品だ
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竹内さんは、フラワーデザイナー・新妻尚美さんに師事し、様々なフラワー装飾、ブライダル装飾などに携わっていた。大手フラワースクールにてプロ養成の講師として指導にあたっていたが、出産を機にフリーランスとなり、ネットのフラワーギフトショップを開設。発送する前に自分の作品を撮影するようになったのが、写真をはじめたきっかけという。後に写真学校へ通い、コンテストで入賞した事をきっかけに写真家への転向を決意。花の世界に長くいたことで花を見る視点が他のカメラマンとは異なることに気づき、花をメインにした写真家として活動をスタートさせた。
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繊細な「花」を被写体として撮影を行うにあたって、撮影中一輪落ちてしまったり、蕾が折れてしまったりする事がある。竹内さんはそれを捨てずに、水に浮かべ、最後までその花を楽しむという。ここに「“Water and Flowers”series」のインスピレーションがあった。
「水の中に落ちた折れた蕾が開き、咲いていくのを見ていて、いろいろな花と水の作品を作ってみようと思ったんです。花の表情だけでなく水の表情も模索してみようと思って撮り始めました」と竹内さん。
こうして始まった 「“Water and Flowers”series」。水をまとった花々が、いつもとは違う表情を見せる「花学反応」をコンセプトに、花種の選出はもちろん、花種によってやわらかい花びらにはやわらかい水の動き、強い花びらには激しい水の動きを合わせるなど、工夫を凝らす。また、写真に透明感を持たせるために、透け感やフレーミングでの水の分量を調節する。
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同シリーズは2015年度には大手化粧品会社のカレンダーにも採用されるなど、注目を集めている。「水は静止できないため、撮影時は何回も何回もシャッターを切り、水滴のバランス、影のバランス、泡のバランスなどにこだわって作りました。多くの方に ”水と花” を楽しんでいただけていたら嬉しいです」と竹内さん。
「“Water and Flowers”series」には、花と水が生み出す一瞬の表情を切り取る写真家としての才能はもちろん、花を知り尽くしたフラワーアティーストとしての才能が大きく関係していた。今後、竹内さんによって生み出される新しい「花」の写真にも期待したい。
竹内陽子 フラワーアーティスト、フォトグラファーとして、花をメインに、花雑誌、女性誌のカメラマン、コマーシャルフォト、企業カレンダー、パッケージ、プロダクトデザインまで、花のスタイリング、写真を幅広く手掛ける。「ハイフォトアワード2011」セミグランプリ、「2016 第44 回 APA アワード 写真作品部門」等、受賞歴多数。公益社団法人 日本広告写真家協会正会員。