―なるほど。ただまあ、とはいえ、それこそケンドリック・ラマーや、去年のビヨンセやフランク・オーシャンのアルバムに象徴されるような最近のヒップホップやR&Bの盛り上がりには、刺激を受ける部分も大いにあるんじゃないですか
ジェニー「もちろん、そういう所からも常に影響を受けてる。私たちが色んな音楽に影響を受けてるというのは、誇張とかじゃ全然なくて本当にそうなのね。ジャンルとかインディーかどうかとか本当に関係ないし。だから、いつもヒップホップのことばかり聞かれるのが不思議なんだよね。ただまあ、実際に毎回、R&Bやヒップホップから影響を受けている曲が確実に何曲かあるわけだけど。ヒップホップの何が魅力かって、最高のビートとベースラインがあって、しかもそれがひたすらリピートされるところに、極めつけにフックが入るってこと。曲の作りとしては最高なんじゃないかな。自分達もそういうところに影響を受けてる」
―しかも、商業的な成功とミュージシャンシップの探求が見事に両立している、という。
ジェニー「いや、ほんと凄いよ。あれが実現できたら夢みたいだよね。自分のクリエイティヴィティを最大限に発揮して、予算とか縛りとか一切なく自分を表現できるなんてさ。しかも売れてるって、もの凄いことだよ。あと、自分がここ何年かケンドリックに影響を受けてると思うのは、曲作りに賭ける情熱なんだよね。アイデアとオリジナリティの塊みたいな感じで、『Good Kid, M.A.A.D City』にはポップでヒットした曲もあるけど、ものすごい長い曲も入ってたりして、アルバム全体が1つの作品として機能してる。そこが本当に凄い。だから、単にヒップホップって部分だけに影響を受けてるわけじゃないんだよ」
テレサ「うん、サウンドだけじゃなくて、美学の部分だよね」
―ただ、そうしてヒップホップやR&Bが勢いを見せている一方で、最近の「ロック・バンド」に関しては、いまいち盛り上がりに欠けるというか――。
テレサ「それって要するに、ロック勢がヒップホップやR&B勢に押されて元気がないってこと(笑)?」
―そんなことはない?
テレサ「まあ、わかる気もするけど(笑)」
ジェニー「ロックがもっと盛り上がればいいなって思う。あの熱狂がまた戻ったらいいのにって。まあ、いつかまた元気になるって信じてるから、自分もこうしてバンドをやってるんだけどね」
テレサ「そのうちまた元気になるでしょ。サイクルが巡ってるからね」
ジェニー「うん、だから絶望はしてないし、ロックは終わったなんて全然思ってないよ。ただ、あの熱狂が恋しくて」
テレサ「それはある(笑)。ビート系の音楽も、ちょっと飽和状態になりつつある気がするし。個人的に、ここ最近ダウンテンポで、ビート重視の、どちらかと言うとトリップホップ的な音楽を作ってたから、そういうビート系の音楽にちょっと飽きてきたっていうのはあるかも(笑)。今の音楽シーンは、あまりにもそっちに寄り過ぎてるのかなって。だから自分が今作ってる作品に関しては、そこにギターとかループとか新たな要素を付け足していけたらなって思ってる」
―それって、何用の音源なんですか?
テレサ「ソロ・アルバム用に作ってるの。今年中には出したいなと思ってるんだけど、まだ具体的なことは何も決まってないから」
―楽しみにしています。ちなみに、今回のリリックについては、何か新たなトピックはありましたか。
ジェニー「あんまり代わり映えしないかな(笑)。いつもと同じテーマについて書いてる(笑)。愛とか、人生とか、その他諸々について(笑)。ただ、前回のアルバムを出してからのこととか、ツアーで経験したことが反映されてたりするから、それは今までにない新しい視点なのかも。あと、前よりもちょっとポジティヴになってるかもね」