―ホイットニーの音楽がこれだけ多くの人に受け入れられたのは、どうしてだったと自分たちでは思いますか。
マックス「むしろ、そういうことはあんまり意識しないようにしてる。初心を忘れないようにというか……自分達が一番最初にライヴをやったときなんて、まるで得体の知れないものだったのに、それを期待して集まって楽しんでくれている人達がいて。あのときの感覚を忘れないようにね。自分達は今まで通り、ただ普通の人間だって思うようにしてる」
ジュリアン「過去は過去として割り切って考えてるからね。今回のアルバムも1年とか1年半前とかに作った作品なわけで、自分達にとっても過去のものだし。実際に作品を聴いてくれた人達にとっても、そのリスナー体験自体は過去のものであって。だからこそ、この瞬間、目の前にあることだけに集中するようにしてる。今は今晩(※東京公演)のショウを最高のものにすること、そして、次のアルバムをもっと良い作品にしてやるってことだけを考えるようにしてるよ」
―たとえば、メジャーもインディーも関係なく、ジャンルも関係なく、「ポップ・ミュージック」という大きなカテゴリーの中で様々な音楽がフラットに聴かれている今のような状況って、スミス・ウエスタンズの頃にはなかったものだと思うんですね。それこそ、ビヨンセやフランク・オーシャンのアルバムと並列にボン・イヴェールとホイットニーのアルバムも聴かれている、みたいな。
ジュリアン「たしかに、状況が変わりつつあるのかもしれないね。けど、そこに時代の変化だとかクロスオーバーを感じるとしたら、むしろユーザー側の視点だよね。今はクリック1つでありとあらゆる音楽にいつでもアクセスできる時代になったんだ」
マックス「そうなると、従来でいう『ポップ・ミュージック』だとかラジオで流行ってる曲とかが、もはや意味をなさない。誰でも自分の聴きたい音楽をジャストなタイミングで聴けるようになったわけだから」
―では、ホイットニーとして曲を作るうえで、あるいはステージで演奏するうえで最も大切にしていることはなんですか。
ジュリアン「ジェフ・トゥイーディー(ウィルコ)が言ってた言葉に『どんなにライヴが最高のバンドでもアルバムが良くなければ、一介のバンドとして記憶から忘れ去られてしまう』っていうのがあってさ。要するに、作品とライヴと両方からの働きかけが必要なんだ。ただ、実際、現在の状況と照らし合わせてみて、20年前とかと比べて確実にCDが売れなくなってるし、現実問題としてただCDを作るだけで生計を立てることは難しくなってる。今どきミュージシャンで食っていくには、ライヴをやってかないことには始まらないわけで、そうなるとどうしてもライヴの比重が大きくなるよね」
マックス「曲作りでもライヴでも一番大事にしてるのは、誠実であるってことかな。もちろん、演奏が上手いとか、そもそも曲が良いってことも大事だし、それがアルバムの評価に反映されていくわけで。ただ、アルバムがそうだとしたら、ライヴの場合、ちょっと気分を変えて即興を入れてみたり、ミスや至らないところも含めて、その場にいる観客と共有して一緒に経験するっていう、人間的な部分が大事なんだろうね。それが誠実さであり、ありのままの自分達をそのままさらけ出すってことなんだよ」