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text by Ryoko Kuwahara
photo edit by Ryoko Kuwahara
photo by Satomi Yamauchi

Kim Ann Foxman × PUNKADELIX Interview

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―こうでなくてはいけないという偶像ではく、違う部分や個性を認め合うというのは必要ですよね。現状へのストレスか、差別を扱う作品が増えてきているのも、カルチャーがオープンマインドでいる大切さを叫んでいるように思えて。


PUNKADELIX「ニュースや教育の現場で学べないことを、私は多くの文学や映画、音楽から教わってきた。例えば差別に関しても扱うところが減っているからこそアーティストがもっと大きな声で伝えていかなければいけない時代になってきているよね」


KIM「特に女性への影響はとても重要だと思う。私がDJを始めたころ、女性はツアーをすることもなければ、良い時間に回させてもらえることもなかった。他のDJと同じサイズで名前をプリントしてもらうために、男性以上に頑張る必要があった。でも、今は女性が自信を得て、女性の地位向上をしようという風潮がある。競争ではなく、女性たちがお互いを高め合って、みんなでやろうって感じ。女の子だってやりたいことをやるべきだよね」


PUNKADELIX「この間ビョークがDJに関してコメントしていたのは少し驚いたの。他のDJと同じようにプレイしたのに、彼女がパフォーマンスしなかったことをメディアが批判したから、男性だと問題にならないのに、女性だから叩かれたのではないかと言っていて」


KIM「人は人を型にはめたがるんだよね。私もHercules and Love Affairを辞めた後は大変だったよ。DJしていると、『どうしてあの音楽をプレイしないの?』と言われて。私は2度と型にはめられたくない。それに、『こういう種類の音楽を作らなければいけない』というようなルールにも従いたくない。もっと幅広いオーディエンス向けの別プロジェクトをやっているのも型にはめられたくないから。ビョークみたいにビッグじゃなくてもそういうことが起こるんだから、彼女がどんな気分だったかは想像できるよ。音楽はオーディエンスに私的な体験を与えるから、反応もパワフル。彼らは心を動かされて、人生の何かと結びつけて意味を見出すから、その人にとっての意味を与えなかったり、何か違うことをやると、個人的に拒絶されたように受け取られてしまう。でもみんなはアーティストも変わるんだということを忘れないでほしいな。あと個人的意見としては、女性であることも確かに影響していると思う。男性アーティストはある程度有名になってしまえば、オナラをしても受け入れられるでしょ?(笑) がんばる必要がなくなる。でも女性は常に『どうしてあんなことをするんだ?』と分析されてしまう」


―マドンナも以前、性に関するスピーチをしていましたね。女性アーティストが歳をとることやセクシーさについて。


KIM「女性の年齢に対して言われると、本当に頭にくる。男性は年齢を重ねていいのに、女性はダメなのかって。自分の終わりは自分で決めるし、セクシーの定義だって私たち自身で決めるべきだよ。マドンナのような世代の声も大切だし、私たちの世代で言うとThe Black Madonnaのような人はすごく重要だと思う。彼女は素晴らしいDJだし、思ったことをはっきりと口にする。みんな彼女の意見を常に気に入るわけではないけれど、私たちには彼女みたいにリアルでいることを恐れない人が必要。彼女みたいな人がシーンで持ち上げられているのは、本当にクールだと思う。彼女は優秀なライターでもあって、自分の主張をとてもうまく伝えることができる人だよね」


PUNKADELIX「この間、彼女が『Dazed & Confused 』のWEBにジェンダーや政治的な部分に言及した文章を書いていてとても素晴らしくて感動していたところ!キムはMaya Jane Colesともコラボレーションしているよね?彼女もすごく魅力的なアーティストだと思う」


KIM「うん、彼女はすごくラブリーだよ。本当に良い人なの。多くのアーティストはエゴが強くて、自分のポジションを気にして、他の人より高い位置にいたいと考えているけど、彼女は他の人を高めたいと思うアーティスト。それってすごくクールだし、みんなそうあるべきだと思う」


PUNKADELIX「日本も以前に比べて女性のアーティストがたくさん出てきて活躍しているのは海外のアーティストのそういった動きも凄く影響していると思う」


KIM「良いトレンドだし、もっと広がるといいね。すべての分野において、もっと女性のエナジーが必要だよ」


―受け入れて生むというね。


KIM「このハードな状況で逆に何か新しい考え方が生まれて、将来的に人々がもっとオープンに考えるきっかけになってくれたらいい。私自身も、こんな状況だからこそ、逆に他者に対してより思いやりを持とうと心がけている。それが連鎖してみんなが思いやりを持ち始め、オープンな考え方になれば、閉鎖的なままだと嫌なヤツに見えるだろうしね。『ゲッ、まだそんなこと言ってんの?』って(笑)」


PUNKADELIX 「そうだね。それぞれのアイデンティティを保持しつつオープンなマインドでいることがDJはもちろんダンスミュージックやクラブシーンにとって一番大事なことだと思う」


photo Satomi Yamauchi
interview&edit Ryoko Kuwahara
Special Thanks:TECHNIQUE 東京都渋谷区宇田川町33-14 久保ビル 2F
TEL 03-5458-4143(SHOP)/ 03-6416-3444(テクニーク・オンライン)
営業時間 月曜 休, 火曜-土曜 14:00~22:00, 日曜 14:00~21:00
http://www.technique.co.jp


Kim Ann Foxman
ハワイ生まれのアーティスト/DJとして、キャリアを積み重ね、NYでNu Discosシーンの先駆けとなった伝説のグループHercules and Love Affairのヴォーカリストとして一躍世界的にその名を知られることになった。現在はNYのもっとも重要なDJとして、ハウスのプロデューサーとして、さらには最近ローンチした自身のレーベルFirehouse Recordingsのボスとして円熟した活動を続けている。 そのソウルフルで官能的なディープハウス、クラシックなシカゴ・ハウスに忠実な、ジャッキンでヘヴィーでいて滑らかなベースサウンドは彼女のトレードマークともいえ、そしてときには自身のヴォーカルをDJブースからライヴする。努力を弛まぬトレンドセッターとしての活動はGucci、Dior Homme、Prada、Addidasなどとの数々のコラボレーションを生んだ。 Kim Ann Foxmanがブースに立つときはいつでも、その献身的な音楽に対するアプローチと彼女のポジティブなオーラでダンスフロアを包み込んでいくのである。
https://soundcloud.com/kimannfoxman


PUNKADELIX
国内外に於いて活動しているアートディレクター・グラフィックデザイナー、近藤麻由によるソロプロジェクト。学生時代より東京そして滞在していたニューヨークでレコードを買い集めるようになりDJとしてのキャリアをスタート。TECHNO・HOUSEをベースに幅広い選曲で独自の”DARK&POP”サウンドを展開。日本各地、海外のクラブからファッション、アート等のカルチャーシーンまでオファーが絶えず、幅広い分野において活動している。’12年オフィシャル・ミックス「ELECTRONIK BEAT PUNK」をリリース。世界各国のアンダーグラウンドミュージックの他、PUNKADELIXオリジナルトラックを収録。現代におけるダンス・ミュージックのあらゆる要素を縦横無尽に、ハードかつエレガントに展開し、女性ならではのグルーヴ感とストーリー性を表現している。’13年よりGalaxy銀河系にて、電子音楽夜会”QBLIqUE”(キューブリック)をスタート。現在毎月2回更新でファッションブランド”SLY”の全国店舗用DJ MIXを手がけている。また、新たなプロジェクト”MAYUDEPTH”名義での楽曲制作を始動し、DJ SHUFFLEMASTER主宰のレーベル”四季協会”より作品をリリース。
https://www.facebook.com/Punkadelix
https://soundcloud.com/punkadelix23
http://www.shikikyokai.jp

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