——手で作っているけれど、宇宙的な俯瞰の視点をもっているという独特のバランスがおもしろいです。
山田「僕のもの作りは、基本的には自分が経験したことしか作品に還元できないという現象学に基づいています。まず自分の中で意味を付けていくわけですが、人に届けるためには自分のエゴに留まるのではなく、共通の認識を作ることが必要。例えば宇多田ヒカルさんのイントロを観て、ある程度の人が宇宙や生死を想起するようになっているように、みんながわかる共通のものにヴィジュアル化するという作業は自ずとしています。そこではおっしゃるように宇宙的な高い視点を使っていて、それがないと、いいのか悪いのかギリギリになってしまって誰のものでもなくなるので」
——その考え方は、パーソナルを突き詰めると逆に広く共感できるものになるということにも繋がる気がします。
山田「内的な宇宙ですよね。例えば赤くて丸い果物というとりんごが出てくるように、個々の経験をしてきているのになぜ共通の認識が出てくるのかを解いていて、そういう考え方は僕の軸になっています。でも外の宇宙も単純にワクワクするから好きです(笑)」
——(笑)。外の宇宙も、ミラーやラ光の表現で落とし込まれていると思います。高いところからの視点や宇宙的な光というのは観ている人との距離感を演出しやすいですし。
山田「そうですね。どこで止めてもポスターになるような綺麗な絵、そして陰影というのは、意味とはまた別の軸でこだわっているので、美しさやスペーシーとはニュアンスが近くなると思います」
——yahyelの“ONCE”は極端に横長の特殊な比率ですよね。あの視覚の遮られ方も宇宙船のようでした。
山田「あれはかなり特殊ですね。シンメトリーなどかなり視覚的なビデオだから、自分が観ていて気持ちがいいサイズにしています。あとは絵として映したいところを出しすぎず、消しすぎずという。Suchmosの“PINKVIBES”もちょっと削っているんです」
——縦型動画というトレンドの逆をいっているのがいいですね。最後に、今後の活動に関して聞かせてください。
山田「MV以外の表現にそろそろ挑戦したいと思っています。フリーランスになっていまちょうど3年目ですが、これまでとにかくがむしゃらにやってきた。毎回これを最後の映像と思えるくらいの気持ちで作っていて、音楽家のためのものとしてMVを作ってきました。そろそろ次はステージを変えて広告だったり、映画で自分の表現をする方向にも向かっていきたい。
もっと先のことで言えば、政治と法律にも関心があるし、ものを作ることでその領域にまで行きたいんですよね。よいものを作る人たちが、社会に起きている人々の生活に根ざしている何かを動かすというのは社会全体の利益になると思うんです。面白いことを作っている人が何をするのかというが大事で、スヌープ・ドッグがトランプのそっくりさんをMVに出したり、海外だとバンドや若いミュージシャンも自分の主義主張をしているけど、そうあるべきだで。日本の映像分野でも、音楽ですらまだどちらかというとタブーとされているけど、別に政治発言だけじゃなく、いろんなことを主張していいと思うんです。主張するからには映像人として自分がもっと精進してからという轍はありますが、いずれはそうありたいと思います」
山田健人/Kento Yamada
Kento Yamada is a Director/VJ raised in Tokyo. He creates videos and other digital arts.His arts contain phenomenological oils.
Belongs to yahyel as VJ.
http://kentoyamada.com
interview Ryoko Kuwahara
宇宙特集
『Voyage of Time : Life’s Journey』Sophokles Tasioulis Interview
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