10代の少年少女4人で作られたZINE『A Moment of Youth』。そのときの、その現場に、オブザーバーではなく当事者としていた者だけにしか撮れない写真が並んだそのZINEは、同世代を中心に反響を呼び起こし、瞬く間にソールドアウト。増刷を重ねるごとに売り切れるという注目度の高さだ。その中心人物である小山田マイロに、ZINEの成り立ちを聞いた。
——ZINEを作り始めたきっかけを教えてください。
Milo「普通の学生をやってたんですけど、モデルをやったりする機会ができて、友だちも増えて。その友だちの写真を撮っていたなかにいいなというものがあったから、なにか形にしたいと思ったのがきっかけです。僕がバイトしているBIG LOVE RECORDSにもたくさんのZINEを置いてあったので、こういうものを作ろうと決めて。ひとりでは内容が物足りない気がしていたときに、RIKU(IKEYA/comme je suisデザイナー)たちと仲良くなったので一緒に作りました」
——内容に関してはメンバーで話し合って決めたんですか?
Milo「Vol.1はこれまでに俺、RIKU、towa、キム・スギョン4人が撮り溜めていた写真からそれぞれがピックアップしたもので構成していて、特に決め事はない。タイトル通り、若者の瞬間を切り取ったものです」
——Youthというタイトルを自分たちでつけてしまうことが新鮮でした。
Milo「僕たちにとっては自然なことでした。一緒に作ったメンバーは同年代だけど、まわりはほとんど年上でいつも『若い』と言われまくっているので、僕たちは若いんだなと(笑)」
——役割分担に関してはどうしているんですか。
Milo「編集はRIKUと二人でやっててーーと言っても編集と言えるほどのことでもないけど(笑)。RIKUはフォトショップを使って編集していて、俺は携帯のアプリで貼り付けて、印刷する紙を選んだり。最終的には俺が他の人から送られてきたものをまとめて、順番をつけて、アプリでまとめて印刷所に送るという感じです。サンプルもなく、一発で作りました」
——出来上がったVol.1を見たときの感想は?
Milo「やったね(笑)。ひとつの区切りとして嬉しかったです。すぐに次はこうしたいというのが出てきたけど」
——反響はいかがでしたか?
Milo「百部作っていたのがすぐに売り切れて驚きました。全部売れるとも思っていなかったし、仲間内で買ってくれるくらいかなと思っていたので」
——自分たちが作ったZINEのなにがそんなに魅力だったのだと思いますか?
Milo「若さ。あとRIKUはファッションや写真をやっていて、俺は音楽、towaはモデル、スギョンは関西で有名な子だし、みんな見事にバラバラで。それがそれぞれの分野に飛び火して伸びていったのかな。購入してくれるのは若い子が多くて、買ってくれた友だちがインスタグラムでアップしてくれて広まってという連鎖もあったし、それぞれの分野にファンでいてくれる同年代の子たちがいるのが要因かもしれません」
——被写体としてはいるけど、モノ作りしている若い子は少ないから目立ちますよね。インスパイアされてZINEを作ってみようという子たちもいました?
Milo「そこまでは僕らにはわからないけど、そういう風になってほしいと思います。ZINEの絵を描いてくれたり、『よかった』という反応はよくSNSで見るんですが、ダメだったという反応がなくて。評判がいいのは嬉しいけど、漠然とした『よかった』だけではなく、細かな指摘や意見も聞きたい」
——ビジネスになっていったら批判も出るかもしれないですね。それに年長者が若者がやっていることにダメ出しするのはセンスがわかってないと逆に批判される可能性もあり、勇気がいる(笑)。
Milo「そうかもしれない(笑)。でもこれをビジネスにするというより、みんなの第一の活動場所はこのZINEではないから、むしろこれが個々の活動に繋がっていけばいいと思います」
——いまVol.2を制作中なんですよね。
Milo「はい。メンバーは流動的なので、次は俺とRIKUのほかにふたり絵描きが入っていて。絵だけの子と、絵を描いてそのうえで写真を撮る子。ひとりはRIKUの友だちで、もうひとりは俺が小さい頃から知っているグラフィティの子です。バラバラのみんながやっているから、お題がありすぎると難しいので、また各自で作品を持ち寄る形になっています。ふたりともメディアに作品を出すのは初めての子たちなので楽しみです」
——仲がいいアーティスト同士でスキルトレードしてみんなで盛り上がろうという流れがあるけど、ごくごく自然にそれをやっているのがおもしろいですね。
Milo「そうですね。俺は絵を描けないし、絵描きの子たちは出版ができないから、お互いにできることを自然にやりあっています」
——ZINEへの参加希望者もきました?
Milo「まだ全然来てない(笑)。今度『装苑』でも紹介してくれるので、連絡がくればいいな。もちろんフォトグラファー志望の子が入ってきてもいいけど、服を作ってる人がこういうことをやっていたりという、このミックスしてゴチャッとなっている感じは持っていたいなと思います」
——以前、ZINEからほかの形にも発展させていきたいと聞きましたが、プロデュースなどを視野に入れているんでしょうか。
Milo「プロデュースはしたくないです。人任せの人は嫌なので、クリエイティヴでやりたいことがあるからスポンサードしてほしいというほうがいい。口を出さないレーベル的なことはやりたいです」
——なるほど。Miloさんの活動はZINEとは別に音楽が核になっていると思いますが、どんな音楽を作っているんですか。
Milo「まだ盤などは出してないですが、宅録で作っていて、いまはダンス、アンビエントっぽいものを作っています。自分でドラム、ギター、ベースができるのでそれで作ったり、あとサックスも練習しています。遊びみたいな感じで、エドツワキさんの展示のときに幼なじみとコピーバンドをやったりもしました。その中のひとりが次号で一緒にやるグラフィティの子です。いまはひとりで作っているけど、本当はちゃんとバンドをやりたいからメンバー募集中って書いておいてもらおうかな(笑)」
『A Moment of Youth』
https://amomentofyouth.stores.jp
Milo Oyamada
https://www.instagram.com/oymdmilo/
photo Riku Ikeya
text&edito Ryoko Kuwahara