―そもそもベルリンに移ったのは、どういうきっかけだったんですか。
ルイ「天からの導きでヨーロッパに呼ばれたんだよ(笑)。ベルリンを選んだ理由は、アート・シーンが盛り上がってるって聞いていたからで。しかも物価が安くて暮らしやすいという経済的な理由もあり、両方の意味で完璧だと思って。ベルリンってヨーロッパを繋ぐ中継地点みたいな、自分を表現したい人間がヨーロッパ中から集まってくるような場所なんだよね」
―ベルリンと言えばテクノやダンス/エレクトロニック・ミュージックが盛んですが、そうした音楽シーンに引かれたところもあったんじゃないですか。
ルイ「それはあるよね」
アナトール「最初、ベルリンに住んだときにはテクノにまったく興味なかったんだ。だけど、向こうで暮らしていくうちに徐々に生活の中に浸透していくようになって、そこから好きになって聴くようになったって感じかな」
―ただ、例えばミニマル・テクノに代表されるベルリンの音楽シーンのイメージと、パーセルズのグルーヴィーでウォーミーなサウンドの感じって、対照的なところもありますよね。
ルイ「そうだね。たしかにベルリンで音楽を作っているけど、今まで自分達がやってきたことが全部積み重なった上で、今の自分達の音楽に至っているという。だから、その意味で言うと、自分達の音楽にはオーストラリアの空気感も反映されているんだろうしね。ベルリンに住んで、確実にベルリンからも影響を受けているけど、音としてまだはっきり現れてはいないというか」
アナトール「今はベルリンに住んでるから、逆に暖かい音楽にフォーカスがいってるのかもね。自分達のまわりをちょっと暖かくしようみたいな(笑)。でも、ベルリンだって暖かくなることもあるんだよ(笑)」
―今のベルリンで自分達と音楽性をシェアできるバンドはいますか。
ルイ「友達のバンドでハッシュ・モスとか、80年代っぽい感覚があって近いかな。〈Kitsuné〉のコンピレーションにも入ってるよ。あと、プライヴェート・アジェンダっていうバンドにも似たような空気を感じるよね」
―パーセルズは5人全員が楽器を演奏し、またヴォーカルもとりますが、曲作りはどんなふうに進めているんですか。
アナトール「常に流動的ではあるんだけど……たとえば去年やっていたのは、1人がラップトップで作った曲をもとにスタジオで全員で作り上げていく、っていうやり方だったね」
ルイ「自分の場合、最近になってようやくそのやり方に馴れた感じだけどね。他のプロジェクトでは、始めにバンドで普通に曲を書いて、あとからコンピューターで仕上げるって形だったんで。だから、最初はちょっと違和感というか、演奏する前から曲ができているのが拍子抜けな感じでさ。ただ、ラップトップで作った曲を再現するのって、実際にやってみるとものすごく大変なんだけど(笑)」
アナトール「理想と現実のギャップが大きすぎて(笑)。ラップトップで作った音を実際にライヴでどう演奏していくのか。そのプロセスを踏まえることで、曲作りに関してはもっと学習できることがあるような気がするね」