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text by Junnosuke Amai
photo edit by Ryoko Kuwahara
photo by Masakazu Yoshiba

Sampha『Process』Interview

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―今回の『プロセス』は、サウンドについて言うと、プロダクション寄りだった最初のEPの『Sundanza』と、ヴォーカルが前面にフィーチャーされた2枚目のEPの『Dual』の、両方の性格がバランスよくミックスされた作品という印象を受けました。今回のサウンド面で大事にしていたことがあれば具体的に教えてください。


サンファ「自分の音楽性が元々持っているようなカオスを表現したいというのがあって、冒頭の何曲かは、過剰に振り切れるような、とにかくいろんなものを詰め込んでやれってふうに、色んな音が同時進行している。アルバム全体を通して、山あり谷ありで上昇と下降を繰り返していたり、自分の中のエネルギーを解放する必要があったんだろうね。プロダクションに関しても、コントロールするというよりは、ただ自分の感情の赴くままに従うようにした。あと、生楽器を使って自分なりに何か新鮮な音ができないかと考えると同時に、無駄を排除したごくシンプルな音と、それとは対照的なエレクトロニックな音を組み合わせてみたりもした。コンピューターで作り込んだ音よりも、ピアノと自分だけのシンプルな構成のほうが強烈に響いたりするのが面白うと思って、そこを表現してみたかったんだ」


―先ほどの「生身の声を生かす」という話と繋がるわけですね。


サンファ「新たなインスピレーションとしては、今回は西アフリカの音楽をよく聴いていて、ウム・サンガレという女性アーティストから大きな影響を受けている。リズム面やプロダクション、ヴォーカルの運び方だったりね。彼女の『Worotan』というアルバムをよく聴いてたんだけど、本当に素晴らしいんだよ」


―“Kora Sings”は、アフリカの楽器のコラのことだったんですね。


サンファ「そう、ギターに似た瓢箪からできた楽器で、あれはまさに『Worotan』からの影響だよ。よくもまあ、ここまで脈略なくいろんなものを詰め込んだなとは思うけど(笑)、自分の頭の中がどれだけクレイジーか表現するためにそうする必要があったんだろうね」


―一方、“Timmy’s Prayer”ではカニエ・ウェストとコラボレートしています。去年のカニエ・ウェストのアルバムにも参加していましたが、あなたがカニエ・ウェストというアーティストに対して信頼を置いている一番のポイントはどこかと訊かれたら、何て答えますか。


サンファ「どうだろう。何しろ昔からのファンだからね。『ザ・カレッジ・ドロップアウト』は、たぶん十代の頃に一番よく聴いてたアルバムだし。自分がプロデューサーとしてのカニエを尊敬してるのは、けっしてひとつの場所に留まらずに、常に進化し続けてるところだよ。実際、最初にやっていた音楽と今やっている音楽はまったくの別物だし、自分の感情や感覚に忠実に従って動いてるんだってことがわかるんだ。そこが人間としても魅力的だしね。一緒に仕事ができることになったのも、元々ファンだったし、願ってもない機会だった。一緒に作ってみて、音楽的にもすごくオープンで視野が広いし、いつでも新しい道を開拓して……サンプリングにしても、『この音をここに入れるか?』っていうような、自分には想像もつかないような突拍子のないアイデアを出してきたりする。“Timmy’s Prayer”のビートはカニエの家に行ったときに作ったんだ。その場の思いつきでサンプルしたんだけど、カニエはサンプリングの名手だから、あのビートが誕生したのもカニエの存在感に押されてかもしれないよ(笑)」

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