フラン「俺たちにもおかしな経験があって、5枚目の『The Boy With No Name』がレコード会社で作った最後のアルバムだった(その後、彼らは自身のレーベルより作品を発表するようになる)。レコード会社とはアルバム5枚の契約だったんだけど、『The Boy With No Name』の時、レコード会社の連中が、“もっとシングルを書け。シングルが必要だ”ってうるさく言ってきたんだ。『The Boy With No Name』はその前のアルバムから3年ぐらい開いていたこともあって、彼らの要求に応える形で、そのうちの2曲で皆が求めるトラヴィスを自ら演じるような曲作りをするという、すごく妙な体験をしたよ(苦笑)」
ショウ「それは興味深いですね。僕らにはまだ、いわゆる大ヒット曲がないので、世間の人たち全員が知っている本当の意味でのOKAMOTO’Sらしい代表曲がまだないのですが、そういう曲が出来たら、どうなってしまうのか、正直少し不安ではあります」
フラン「だから、すごく難しいことではあるんだけど、曲を書く時に自分の頭のスイッチを切ってみるんだ。自分の中には4才の自分がいて、そいつの言いたいことを言いたいように言わせるんだ。本来、曲を書くべき人物は、そいつなんだよね。そいつは何も意識せず、頭で考えず、正直で、自意識も無く、大人になるとなかなか味わえない自由を謳歌してる。だから、そいつに語らせるんだ。そしてそれを曲にし、演奏する。そうすれば、あらゆる人に伝わるよ。そうすれば、人それぞれ、自分のなかに抱えている4歳の自分が感じ取ってくれるはずだから。人にはその内面にあらゆる年齢の自分がいる。なかでも4歳という年齢は特別で、発する曲にもパワーがある。ジャーナリストが書く言葉でも言い尽くせないような……首から上じゃなくて首から下から湧いてくるような曲。スイッチを切って、そういう曲作りをするのは本当に難しいけどね」
ショウ「そう、どうしても余計なことを考えてしまったりしますよね」
フラン「そう。ひどいもんだよ。自分を敵に回すようなものだからね。曲を書く行為というのは、炭鉱で掘って掘って掘りまくって、やっと出てきたのが、ちっちゃな金だったとしても、その先に金脈が広がっているんだと信じてまた掘っていく。本当に大変なことだ。ただ、その途中で自分で勝手に判断してやめてしまうのは最悪だ。その先があっても進めなくなってしまう。だから、考えないで、とにかく掘るのみだよね」
――実に興味深い話です。
フラン「曲作りは、限界があると自分で思ってしまうとそこで止まってしまう。もちろん、どこかでよしとしないと曲は完成しないんだけど、行けるところまで進み続けるというのがなかなか難しくて、もうひとがんばりすれば、すぐそこの角を曲がったところに目指すものがあったりするんだけど、自分から止めてしまいがちなんだ」
アンディ「その先があることを一度でも経験すれば、感覚を掴んで、また繰り返すこともできるようになるんだけどね。その、何ていうんだろう……合図?」
ダギー「ああ、わかる」
フラン「道路標識みたいに、止まれの合図が見えると止まってしまうけど、“この先の角を曲がればすぐ”って書いてあるのがわかるようになるんだ」
ショウ「自分はまだそこまでたどりつけていないとは思いますが、言ってることはよくわかります」
フラン「やってみなきゃ。きみが言ってた曲、“The Kids Are Alright ”にしてもそうだし、大ヒット曲というのはどれも、そうやって書かれてるんじゃないかな。聴けばわかる。聴いてるうちに頭のスイッチがオフになるからね。それは曲に限らず、映画でもサッカーでもそう。プツンとスイッチが切れる時がある。その瞬間に到達できれば、面白ことになると思うよ」
――日常生活にも当てはまる、トラヴィスの曲作りの極意ですね。
フラン「ずっと前、確か、2005年だったかな、スコットランドの『T in The Park』っていうフェスティヴァルに出演した時、フー・ファイターズが俺たちの後だったんだよね。で、俺、あいつらと一緒に座ってて。デイヴ・グロールはじめ、みんな、すごくいい連中で、イェーガーとかガンガン飲んで、ワイワイやってて。で、いよいよあいつらの出番だっていう時にデイヴが言ったことが、すごく印象に残ってるんだ。“さて、きみらが書く曲のパートは終わったから、ここの続きは俺たちが書くよ”って。つまり、フェスに出演するってことは、全バンドで長い1曲を仕上げるっていうようなことなんだ、と」
ダギー「おぉ、いいなあ、それ」
フラン「最高だよな。それってフェスの精神としても正しいし、音楽の理想的なあり方なんじゃないかって思ってさ」
アンディ「フー・ファイターズといえば、彼らは最初出てきた時、あんまりうまくいかなかったんだよな。当時はブリットポップ全盛で、フー・ファイターズはそこには上手くハマらなかったし」
ニール「ニルヴァーナのドラマーっていうイメージも、最初は逆効果だったんじゃないかな」
アンディ「だよな。でも、そのニルヴァーナのドラマーだったというキャリアが、どこかで突然、好意的に受け取られるようになった。ビデオもいいのを作ったしね。とにかく、急に弾けたよな。あれって、何だったんだろう。それまで誰も注目していなかったのに、突然、“え?あのデイヴ・グロール!?”って話になったんだから、不思議なものだよな」
フラン「だから、考え込まずに、君もがんばって続けていけよ」
ショウ「はい。今回の対談で、自分たちも行けそうな気がしてきました」
ダギー「そうそう、その調子で掘り続けろよ!」
photo Shuya Nakano
interview & text Yu Onoda
edit & direction Ryoko Kuwahara
Travis
『Everything at Once』
発売中
(Red Telephone / Caroline / Hostess)
https://www.amazon.co.jp/Everything-At-Once-Travis/dp/B01AHD2AI4
OKAMOTO’S
『BL-EP』
発売中
(Ariora Japan)
https://www.amazon.co.jp/BL-EP-完全生産限定盤-OKAMOTOS/dp/B01M2YP1Z6/ref=sr_1_1?s=music&ie=UTF8&qid=1485003588&sr=1-1&keywords=okamoto%27s
Travis公演情報
Travis Japan Tour 2017
東京 2/13 (月) &14(火)ZEPP DIVERCITY
開場18:00/開演19:00
名古屋2/16(木) ダイヤモンドホール
開場18:00/開演19:00
大阪 2/17 (金) Namba Hatch
開場18:00/開演19:00
■ライブ公式情報はこちら
http://www.smash-jpn.com/
OKAMOTO’S
オカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)。2010年5月にアルバム 『10’S』、11月に『オカモトズに夢中』、2011年9月に『欲望』を発売。2013年1月に4thアルバム『OKAMOTO’S』を発売し、7月に は両A面シングル“JOY JOY JOY/告白”を、11月6日にニューシングル“SEXY BODY”をリリース。2014年1月15日に岸田繁(くるり)を迎えた5th アルバム『Let It V』を、8月27日にはRIP SLYME、奥田民生、黒猫チェルシー、東京スカパラダイスオーケストラ、ROY(THE BAWDIES)らとコラボを果たした5.5 thアルバム『VXV』を発売。2015年9月30日、6thアルバム『OPERA』をリリース。2016年6月1日にNetflixドラマ「火花」の主題歌「BROTHER」を表題曲にしたシングルをリリース。10月29日、東京・日比谷野外大音楽堂公演にてキャリア初の47都道府県ツアーファイナルを敢行。12月21日に映画『にがくてあまい』の主題歌「Burning Love」などを含むEP「BL-EP」を発売。
http://www.okamotos.net
Travis
スコットランドはグラスゴー出身、レディオヘッドやオアシス、コールドプレイと並び英国を代表するロック・バンド。1997年『グッド・フィーリング』でアルバム・デビューを果たし、99年ナイジェル・ゴドリッチをプロデューサーに迎えた2nd『ザ・マン・フー』をリリース。この作品が全英チャートの1位を獲得し、全世界で約400万枚のセールスを記録。3rd『インヴィジブル・バンド』(2001年)は全英チャート初登場1位、全世界で約300万枚を売り上げUKトップ・バンドとしての地位を確実なものとした。2013年、通算7枚目のアルバム『ウェア・ユー・スタンド』をリリース。2016年4月に待望のニュー・アルバム『エヴリシング・アット・ワンス』を全世界同時リリース。7月にはフジロックフェスティバル ’16への出演が決定。2017年2月にジャパン・ツアーを開催(詳細は http://hostess.co.jp/travis/2016/07/011706.html)