――ロシュディ・ゼム監督と組むのは初でした。いかがでしたか。
プロデューサーがロシュディ監督の名前を挙げた時は、最初驚いたよ。彼の作品は大好きだけど、彼の名前を予想してなかった。だけど、監督と作品の話をしたらすぐに、すばらしい人選だって分かったし、監督の熱意を感じた。僕らには共通点があった。僕らはお互い、郊外出身の移民の子どもなんだ。だけど、監督は80年代半ばにキャリアをスタートさせたから、僕よりも自分の居場所を見つけるのが難しかったと思う。僕の時は、すでに彼や他の人たちが作ってくれた土台があったからね。彼なら自身の経験を生かして、作品に面白いアプローチをするだろうと確信したよ。
ロシュディ監督はとてもフランクで、人間関係を円滑にする才能があるね。この仕事をしていると、行間を読まなければいけないことがよくある。ロシュディ監督と同じくらいスムーズにコミュニケーションを取ることができたのは、エリック・トレダノ監督とオリヴィエ・ナカシュ監督だけだよ。ロシュディ監督自身も俳優だからだと思う。俳優の置かれている状況が分かるから、どうやって指示を出すべきか分かってる。監督の作品をすごく尊敬しているから、失望させたくなかった。そういう思いが、演技のレベルを高めてくれるんだ」
――舞台出身者や映画監督出身の俳優らと共演するのも初めてでしたね。
オマール「ロシュディ監督のすごいところは、有名無名関係なく、役にぴったりの俳優を配役するところさ。キャスティングに関してはプラスA評価だよ。クロチルド・エム、オリヴィエ・グルメ、アレックス・デスカス、オリヴィエ・ラブルダン、フレデリック・ピエロ、ノエミ・ルボフスキー……皆一流の役者たちだ。未熟者の僕にとっては、とても光栄だった。皆役になりきって、僕らと同じだけのエネルギーを現場に注いでくれた。僕は小さな役で出演する時は、あんなふうに全力で挑んでないな。彼らの仕事への取り組み方なんだろうね。すべて作品のためなのさ。美しいセットや衣装を見ると、みんなが真剣に仕事に取り組んでることが分かるよ。ふたりの道化師とショコラの人生を描く美しい映画を作ろうという志を、僕らはみんなで共有したんだ」
――あなたもショコラのように白人女性と結婚をし、病気の子供への支援をしています。
オマール「実は、僕の妻は10年間にわたって病気の子供のための団体に携わっていて、僕は子供たちを楽しませるために病院を訪ねてるんだ。マリーとショコラが同じことをしていたと知った時は鳥肌が立ったよ。この物語が僕の心を打った理由のひとつでもある。僕は奴隷として生まれてはいない。他の人たちと同様、自由の身だ。そこが、ショコラとは決定的に違う。だけど、彼が何を考えていたか想像できる。それに、彼のことを理解しようとすることで、自分のことを理解できたよ」
――ショコラと彼の運命について、観客に何を感じてほしいですか?
オマール「ショコラのことに興味を持って、彼を知ってくれれば、それでうれしい。アーティストであるということは、後世に足跡を残すということだからね。でもショコラの足跡は消されてしまっている。それをもう一度浮かび上がらせたい。彼のしたことは無意味なんかじゃない。ショコラは、アーティストとしてフティットと対等に見られたがっていた。フティットに関しては、たくさんの記録資料がある。ショコラに関してもそうなってほしいし、ショコラがこの映画を気に入って、僕らが注ぎ込んだ愛を感じてくれたらいいな。最後に、もっと個人的な願いがあるんだ。『最強のふたり』が大ヒットして、セザール賞を受賞した時、僕はフランスで名声を手に入れた最初の黒人アーティストだと言われた。だけど今後、みんなに覚えておいてほしい。僕の前にショコラがいたことを」
『ショコラ ~君がいて、僕がいる』
◆監督:ロシュディ・ゼム
◆出演:オマール・シー、ジェームス・ティエレ、クロティルド・エスム、オリヴィエ・グルメ
2015年/フランス/119分
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOVIES
(C)2016 Gaumont / Mandarin Cinema / Korokoro / M6 Films
http://chocolat-movie.jp
2017年1月21日(土)シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー
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