近頃世界は、自分と違う人やものをどんどん嫌いになってきているように思える。そんな排他的なムードを感じてか否か、クリエイティヴな分野では人種やセクシャリティなどの壁を乗り越えて通じ合う人の絆を描いた作品が多く届いている。フランス史上初の黒人芸人ショコラと、彼を支えた相方の白人芸人フティット。映画史上初めてスクリーンに登場した芸人コンビとなり、万人を魅了した彼らの実話である『ショコラ~君がいて、僕がいる~』のインタビューを皮切りに、「BEST FRIENDS FOREVER」(略してBFF)と題した特集を1月中に随時更新。異なるからこそおもしろく、刺激がある、尊敬できる。そんな風に人と接していけたら、世界はピースになっていくかもしれない。
『ショコラ ~君がいて、僕がいる』ジェームス・ティエレ
フティットとショコラをつなげているものの力は、彼らを引き裂くものよりも強かったのさ
――フティットとショコラの存在は知っていましたか?
ジェームス「いいや。サーカスの世界で育ったのに知らなかった。僕の両親は、『ヌーヴォー・シルク(新しいサーカス)]と呼ばれるショーを催していて、子どもの頃から伝統的なサーカス団たちと親交があった。両親は、トーター、ドゥドゥレ、フラテリーニ兄弟などの道化師の美しいポスターを持っていたよ。だけど、ロシュディ監督から聞くまで、フティットとショコラについては何も知らなかった」
――これまで15本の映画に出演されていますが、道化師の役は初めてですね。
ジェームス「「タブーに近かったんだ。両親と僕にとって、伝統的なサーカスは自分たちの対極にあるもので、赤い鼻を付けるというのは、僕が舞台では絶対にやらないことだ。この役をオファーされた時、最初は少し怖かったし、自分には合わないと感じた。『サーカスのパフォーマンスのシーンをどうするのだろう? ヒューマンドラマの部分だけ描くのか? それとも、ふたりの芸術的な関係性にまで踏み込むのか?』と疑問に思い、すぐにロシュディ監督に尋ねた。それから、サーカス・シーンの提案をした。僕は、サーカスのテントの下で可能なことが、大スクリーンでも可能だとは限らないと監督に言った。そしたら監督は、この映画で重要なことはフティットとショコラの関係性だと言った。オマールと僕でマリオネットのようなパフォーマンスをするのだろうかと心配だった。慎重にやらないといけないぞと、僕の血が訴えたよ。それでも、ジョルジュ・フティットのキャラクターにすっかり魅了されてしまった。この役を断っていたら、バカだったよ」