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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#36 座禅

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 さて、では具体的に座禅を組むとはいったいどういう手はずがあるのか。
 座禅においては大切なものがまず三つある。
調身、調息、調心、である。
 そのまま読んで分かるように、調身とは姿勢を整えること、調息は呼吸を整えること、調心は心を整えることである。
 まず調身だが、足の組み方としては、正式には結跏趺坐であり、それが難しい人には半跏趺坐がある。詳しくは調べてもらうとして、自分のように膝を痛めている人は、ただの胡座でもいいし、椅子に座るでもいい。ただ仙骨を立て、背筋はぴっと伸ばすことが望ましい。
 次に手を組むのだが、法界定印という印を結ぶ。一休さんがやっている手元のポーズである。これも調べてもらえばすぐ分かる。その後に体を前後左右に揺すぶって、落ち着きのいい場所を探し当てたらそこに重心を定める。最後に目を半分だけ開けた「半眼」の状態で1・5メートル先の床に視線を落とす。この時は、しっかりと見つめるのではなく、ただぼんやりと視線を置くようにする。背筋を伸ばしつつも、肩を脱力し余分な力みを除く。これで調身は完了だ。


 二番目の調息に移る。呼吸という言葉にあるように最初に呼気、つまり息を吐くことから始める。腹筋を使って、腹を凹ませていくことでゆっくりと息を吐き切る。体にある息を全て漏れなく吐き切る意識を持つといい。吐き切ると、自然に腹が反動で膨らみ始め、吸気が始まる。吸うというよりも自然に流れて入ってくるようになる。呼吸が整ってくる頃に、丹田に意識を向ける。脳に上がった意識をすっと下げていき、ヘソ下10センチ辺りの丹田に脳がそっくり移動してきたかのように。脳を空っぽにして、体の中心に位置する丹田を意識する。これで調息も完了。


 調心。実はこれが一番難しい。そもそも心が乱れてしまうのを克服したいから座禅に取り組んでいるからだ。まずはいったん心を空っぽにすることを目指す。ロウソクの炎を凝視したり、呼吸を数えたり、要は思考が始まらないように別の何かに集中することで、心に空白を作ろうとする。自分は数えないが、丁寧な呼吸に意識を集中することが多い。姿勢と呼吸に集中しているうちに、自然に心が安らかに穏やかに広々としてくるのが分かる。それは他では得難い時間で、これこそが本来の自分だと思えたらどんなにか良いだろうという心地だ。


 とかく人は心にいろいろ詰め込みすぎて、容量オーバーな状態でいることが多い。特に都会で暮らす人は、常に過密な心で疲弊していると言っていい。
 座禅の時間は、不要な容量を捨てる時間を持つことができる。1方向に流れ続ける暮らしを一時停止して、心を空け、心を軽くするための時間となる。


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