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text by Shoichi Miyake
photo edit by Ryoko Kuwahara
photo by Yuichi Akagi

Yahyel『Flesh and Blood』interview

D

——dutch(山田健人)はVJの映像やMVを制作するときにどんなことを念頭に置いてますか?


山田「曲との親和性だけですかね。そんなに映像として海外っぽいとか国内っぽいとかを意識してるわけじゃなくて。結果的には海外っぽいというか、無国籍な映像になっているとは思うけど。画の感じとか質感とかモデルの人選なのかわからないけど。あくまでyahyelっぽいじゃんって感じで作ってますね」

——その“yahyelっぽい”というのは?


山田「それこそ日本人と韓国のラップで言ったら、Ugly Duckの「ASIA」(feat.Reddy,JJJ & DJ Scratch Nice)」のMV (https://www.youtube.com/watch?v=fGk2v_1ggIg)なんかはアジアのなかの日本をフィーチャーしているシーンがあって。あれはあれでカッコいいと思うけど、yahyelはそういう面を一切出さない。場所も特定しない。MVの撮影場所がどこという考え方自体がないんです。基本的に日本のバンドのMVってメンバーを立たせて、かわいい女の子をときどきインサートして、どこかで撮るじゃないですか(笑)」

——それが定石というかね。


山田「yahyelにとってそこに意味はないと思っていて。逆にOnceにおける中銀カプセルタワービルの使用は、メタボリズム建築という点で曲との親和性があったので。場所や物など、特定出来る何かが写っている場合は必ずそこに意味があります。あとは、そもそも僕が好きな画の感じを活かしてる。わかりやすく例えると、トーンで言ったら、インスタで、一発で加工できる、黒い部分が薄いフェードがかかった写真ってあるじゃないですか。ああいう感じよりも、フィルムで言ったら銀残しの手法みたいな。、黒のドスが効いているシネマライクなルックが好きなんですよね」

——陰影が濃厚で。


山田「そう。で、どの瞬間で止めてもカッコいい画であるべきという僕のなかのルールがあって。撮っている段階で、『この画って最強じゃん』という瞬間の連鎖でしかない。その“最強じゃん素材”だけで映像を構築してるからうまくいくという理屈が僕のなかであるんですよ」

——メンバーから映像に関するリクエストはあるんですか?


池貝「しますよ」
山田「今作っている『Alone』のMVだったら、大枠を3日か4日くらいかけて作って。それをメンバーに投げて、チェックしてもらいながらアップデートしてます。ちょうど昨日の夜もガイ(池貝)と話していて。80%くらいは僕が組み立てますけど、最後はみんなの意見を合算しながら折り合いをつけていく。やっぱりアウトプットはバンドのものだから」
池貝「MVを撮る前からdutchと話すんですよ。『こういう曲だから』って。リリックも送るし」
山田「そう、毎回リリックを送ってもらっていて。曲との親和性というのはそこですよね。でも、(リリックに対して)直接的な描写ではないというのがキーで。わかりやすすぎない、ということ。リリックそのままの現象が映像で起きているのがイヤなんです。メッセージが裏で忍んでる感じがいい。だから、超比喩っぽい映像だと思います。深く勘ぐるとわかる。そういう話を撮影前からメンバーとしますね。撮影にもみんな来るし」
池貝「昨日は小津安二郎とウェス・アンダーソンの話をしてましたね」

——dutchのなかでyahyelのディストピア然とした音楽世界と自身の作家性との共振は最初からあったものなの?


山田「最初にyahyelのライブでVJをやった瞬間から共振するものがあった。当初はノリで始まったんですけど、僕の好きな感覚とあまりにジャストで。ノイジーで根暗な感じが最高にハマって(笑)」
杉本「イルナミティな感じとかね(笑)」
山田「そう、カルトっぽい感じとかね。“ジーザス”って感じ(笑)。そこと完全にヒットした感覚が僕のなかで超あったのはデカい。これまで何組かのバンドのライブでVJをやりましたけど、(自分の作家性と音楽性が)フィットしている感じが全然違う。完全にやりたいことをやれてるのがyahyelですね」
池貝「うれしい。山田は映像作家として僕らとは違うステージにいる人間だと思っていたので。シンプルに最初から親和性を感じてくれたのはうれしいです。山田は一番仕事ができる男なので、このなかで」
山田「おおっ(笑)」
池貝「他者から要求されることのアウトプットを一番経験してるから。最初は山田が作りたい映像がどういうものなのか知らなかったんですけど、活動を共にしていくうちにそこに親和性があったのは驚きでもあり。MVを作る度に制作スピードが上がってるところを見てもどんどん親和性がブラッシュアップされていることがわかるし」


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