―ルシールさんは初期から今までの作品が連続して子供が主役ですよね。それにはこだわりがあるのでしょうか?
ルシール「どうして子供を主役として毎回使うのかっていうのには明確な理由は自分自身も分からないんです。もしかしたら自分の子供時代に大きな心の動きがあったりしたかもしれないけれど、精神分析を受けてみないとそんなことは分からない。でもいわゆるティーンエイジャーに達していない子供というのは、何もかもが初体験で非常に感受性が強い。物事に対して敏感であるというところから、彼らの目を通して何かを描くことに私は強く惹かれています。子供というのは驚きに満ちた生き物ですし、生き生きとしていて、人々の心を動かすパワーを持っている。演技指導はできないけれど、そこもまた愉しさでもある」
―手術のシーンはグロテスクでありながら、とても神秘的でした。ご両親が医療系のお仕事をしていたということで、それの影響もありますか?
ルシール「安心してください。私の両親は病院に勤めていたのですが『エヴォリューション』で描かれているような手術を親からは受けていないですよ(笑)ただ、親が働いている病院にはあまり行かなかったんですけど家の中で病院の話を聞いていたので、無意識にそれを映画で描きたくなったのかも。まだ両親にこの映画は見せてないんですけど、もし彼らが見たら「娘はこんな風に僕らのことをとらえてたんだって」びっくりさせちゃうかもしれませんね。実は私の父親は産科医だったんです。それでよく、小さい時に周りの子供たちから「君のお父さんは病院で子供を産ませてる!」ってことをよく言われてました」
―映画監督として自分の性別を意識することはありますか?
ルシール「映画を撮っているときは女性というよりは、ひとりの人間として私自身として映画を撮っているつもりなので、私自身は女性監督というカテゴリー化されることは好きじゃないんです。それに『女性監督映画』というジャンルがあるとは全く思ってません。フランスではないですが、国によっては女性であることが映画を撮ることの弊害になることもあると思うし、理解もできます」