―少年ニコラのマックス・ブラバーは泳ぎが上手だったんですか?
―マックスはオーディションで選ばれたんですよね?
ルシール「とにかく演技の経験がある男の子は避けたくて。キャスティングディレクターの女性がパリのスウィミング教室に募集をかけたり、ずいぶん長い時間をかけて探したんですけどなかなか見つからなくて。知り合いの知り合いにブリュッセルでキャスティングをやっている人がいて、その人がマックスのビデオを見せてくれたのがきっかけですね。それを見て、彼が持っているか弱い部分であったり内向的でダークな表情に惹かれ、実際に他の男の子と演じてもらって、彼にカリスマ性を感じてニコラ役に抜擢しました。でも、実際撮影を始めると、マックスは明るい性格でよく笑う子だってことが判明して!ニコラ役は不安げで、笑うシーンは皆無だし、マックスがニコラの役になりきれるか正直心配にもなりました(笑)」
―完成した映画を見る限り、そんな心配はいらなそうでもありますが。
ルシール「そうなんですけど、カットとした次の瞬間にはもうゲラゲラ笑っているって感じで、困ってしまいました」
―彼にはどんな演技指導をしていたんですか?
ルシール「マックスも含め、子供たちには脚本を読んでもらうのですが、ストーリーに対して興味を持ってもらうことは至難のワザで。そうなると彼らには撮影に楽しく参加してもらうのが重要になってくるのですが、子供はすぐに退屈になってしまうので、集中力を持続させることが一番難しかった。私は彼らに「とにかく、無表情でニュートラルでいなさい、なにも表現しなくていいから。」と伝え続けました。夢遊病者のように目を開けて眠っているような、ニュートラルな表情でいることで、観客は自分の感情を役に投影しやすいはずだと私は思っていました。だから子供たちに対して細かい演技指導などはしてないんです」