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text by Junnosuke Amai
photo by Akihito Igarashi(TRON)

Animal Collective『Painting With』Interview

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――ケンドリック・ラマーのどこに一番惹かれます?

―デイヴ「やっぱり、ミュージシャンとしての姿勢に共感できるというかね。自分達も日々いろんなジャンルの音楽を聴いてるわけで、ケンドリック・ラマーもきっとそんな感覚なんだろうなって、そこがまさに現代的なヒップホップって感じがするんだ。作品を聴いてるとやっぱりいろんな音楽に影響を受けてるなっていうのがわかるし、ジャズとかもともと自分も好きで、ここ最近の何年か3人とも前にも増して聴くようになってるんだけど、そういう影響が垣間見えるところとか。あとはライヴだよね。生楽器を取り入れてたりとか……そういうところが、ここ5年か10年くらいのブラック・ミュージックやR&Bよりもオーガニックな色合いが強くて、すごくいいと思う」

―ブライアン「あと、全体的な構成の仕方とかも面白いよね。いくつものセクションに分かれてて、それをあちこちで活用しながら全体を組み立てていくみたいな……だから、エレクトロニックなんだけどオーガニックで、ある意味コラージュ的というか。そこがまた面白いと思うんだよね」

――サウンド的な魅力もそうですが、一方で、作品の背後にあるストーリーや政治的なメッセージについては、率直にどう思いますか? 共感する部分もある?

―ノア「まあ、共感というと、すごく個人レベルの話になってしまうけど」

―デイヴ「自分もまさにそこに賛同するみたいなね」

―ノア「そう、賛同してるような」

―デイヴ「ケンドリック・ラマーは自分のいるコミュニティに向けて、ああいう政治的なメッセージを発しているわけで、自分達はブラック・カルチャーの中で育ったわけでもないし、ゲットーで暮らしたこともないから。だから、共感って言ってしまうと言葉は強いかもしれないけど、彼がやっていることに対してはすごくいいなと思うし、自分のコミュニティのために何かしたいっていう姿勢は共感できるよ。しかも、それをすごくポジティヴな形で伝えてて、それがすごく新鮮だよね。その伝えているメッセージが、ここ最近の世界の各地で起こってることにも当てはまるような気がするし……過激な表現であるとか、そういうことは関係なしに音楽を通じてこういう形でメッセージを伝えていくこともできるんだなっていう。そこもすごく新鮮だよね」

――あなた方はこれまで、アニマル・コレクティヴとして政治的なメッセージを発信することは意図的に控えている、と語ってこられたと思うんですね。ただ、そうも言っていられない状況がいまのアメリカでは起きてるのかな、という気もするのですが。

―ノア「まあ、たしかにそう思うこともあるよね。実際、ノースキャロイナで起こったことで……」

―デイヴ「こないだ法改正があってね」

―ブライアン「そう、たとえ性同一障害でも自分の出生証明書にある性別のトイレを使わなくちゃいけないっていう法律が決まって、それに対する抗議に少し関わったりはしたよね」

―ノア「まあ、あれはわりと関わりやすいケースではあったからね」

―ブライアン「実際に抗議活動に参加したりとか、特定の候補者を支持するようなことはしてないよ。ただ、このあいだアメリカ大統領選の日に自分達がどこにいるのか調べたら、ちょうどツアーでフロリダあたりにいるかもしれないことがわかって。今回の選挙の鍵を握る州だから、選挙権のある若い人達に向けて何か発するべきなのか考えたりもしたし……って、まだ何も決まってないけど。できれば選挙の日にフロリダにあたらないといいと願ってる(笑)」
デイヴ「関わらないで済むようにね(笑)」

――そのLGBT差別の州法に対する抗議うんぬんって話は、先日リリースされたライヴ音源のチャリティ・アルバムのことですよね。あれはどういった経緯で?

―ブライアン「あの頃、ちょうどその法改正に反対するバンドやアーティストが、ノースキャロライナのライヴをキャンセルして抗議するっていう運動が起こってて。もともとは音楽ジャーナリストの呼びかけから始まった企画だったと思うんだけど、〈Merge〉とか地元のレーベルにも呼びかけて、ライヴをキャンセルするよりも抗議活動の場として活用することを提案したんだよね。ライヴの会場で法改正に反対するチャリティ団体とかNPOが啓蒙活動をしたりして、バンドのほうもライヴの収益の売り上げを支援活動に寄付したりとか、そうした一連の流れに僕らも賛同したという」

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