――今回のアルバムは、過去にマイケルやリアーナも録音したことがあるハリウッドのスタジオでレコーディングが行われたんですよね。
―ノア「まあ、たまたまというか。実はあのスタジオの前にロンドンとパリのスタジオを予約してあったんだけど、どちらも直前になってキャンセルになっちゃって。しかもレコーディングが始まる寸前で……で、なんやかんやいろいろあって、直前になって急遽あのスタジオが候補として挙がったというか。どこでもいいかからとにかく使えるスタジオを探しまわってたっていうだけで、デイヴはとくに気乗りしてなかったけどね。スタジオがある場所がロサンゼルスで、デイヴの住んでるとこでもあるし。本来なら知り合いとか誰もいないところにスタジオを借りて、レコーディングだけに集中できる環境で作業するのが好きなんだ。ただ、話を聞いてみると今回のアルバムで求めている方向にも合ってる気がしてね。結果的にあのスタジオでレコーディングできて良かったとは思うけど、最初は他に選択肢がないからやむを得ずっていう感じだったんだ」
――そういえば去年、今回のアルバムがアナウンスされる前に“Michael, Remember”という曲を公開されましたけど、あれは――
―ノア「“Michael, Remember”は、2週間で作った曲なんだけど……みんな離れて暮らしてるから、それぞれが自分のパートを作って、やりとりしていった感じで。それで2015年の5月だったかにノースキャロライナに集まって、完成させたという。ただ、機材をセットするだけで最初の何日かは完全に潰れちゃったけど。でまあ、その設定でどんな音が出るのか、感触を確かめながら作っていったという」
――てっきり、今回のアルバムのレコーディングで使われたスタジオにちなんで付けられたタイトルなのかと。
―ノア「いや、あれは何て言うか、ジョークみたいな……」
―ブライアン「ハハハハ」
―ノア「とりあえずマイケル・ジャクソンとは全然関係ないんだ(笑)。ちょっとおふざけみたいな」
―デイヴ「友達のスタジオでインプロヴィゼーション的に作った曲だよね」
―ノア「あれはマイケルと同じスタジオでレコーディングするってことが決まる前に作った曲だから」
――ただまあ、とはいえ今回の『ペインティング・ウィズ』の曲って、これまでの作品と比べるとR&Bとかブラック・ミュージックっぽい要素が強く感じられると思うんですね。とくに“Vertical”とか“Bagels in Kiev”とか……そう言われて思い当たるところはありますか?
―デイヴ「実際、3人ともマイケル・ジャクソンの大ファンで、子供の頃から聴いてるからね。自分達でも気づかないうちにR&Bから影響を受けてたのかもしれないし……。もともとこのバンドを始めた2000年前後に、あの時代に流行ってたティンバランドとかアリーヤとかのプロダクションにハマってて、すごくインスパイアされてたこともあるし。具体的なサウンドっていうよりも、そのユニークさっていう部分においてね。誰にも真似できないユニークなサウンドを作ろうという姿勢というか……。あとは今回のアルバムはエレクトロニックってことを前提にしてるから、それでブラック・ミュージックな要素が色濃く出ている印象になってるのかもしれないよ。ただまあ、それだけではなくて、オーガニックな感触も取り入れつつだけど。全体的にエレクトロニック色が強い作品になるだろうってことは感じていたし、自分達なりにブラック・ミュージックやR&Bから影響を受けた結果が、今回のアルバムの形に出てるってことなんだろうね」
――ちなみに、最近の音楽でとくに刺激を受けたものといえば?
―デイヴ「ケンドリック・ラマーとか、最近3人の中で盛り上がってるよね」