—偶像のままでいてほしい葛藤ですね。ちょっと話が離れたから戻りますけど、メジャーデビューの名刺替わりとして、“神戸で逢えたら”を入れたんですか? tofubeats「はい。ライブではこのカバーを結構やってるんです。このシングルは神戸感があまりなかったので入れたくて」 —確かに他2曲は東京寄りですもんね。 tofubeats「めちゃくちゃ東京寄りです。ちょっとソツなく行き過ぎたなと思って。だから、嫌なんですけど、アクとして自分のボーカルも自分のボーカルも入れました」 —いい声してますよね。 tofubeats「でも音痴を治すソフトを通さないと歌えないっていう問題を抱えてまして。あの僕、鍵盤弾けないし、楽譜読めないんです」 —えっ、本当に? tofubeats「弾けないです。だから自分の曲が弾けないから練習して動画を撮ってみるっていうのを始めました」 —シンセは絶対弾けるもんだと思ってました。 tofubeats「シンセとか片手でピロピロ弾くくらいできるんですけど、全部パソコンに入れてから直したりしてて」 —メロがシンセ寄りだなと思ってたんですよ。 tofubeats「あっ、でも鍵盤で曲作ります。楽譜はまだ勉強中で、読めないです。森高さんにもメロ譜を渡さなきゃいけなくて、焦って、取りあえずソフトにMIDIデータぶち込んで、そのまま送ったら間違えてるって言われてレーベルの方に直してもらうっていう、ちょっと音楽家としてはあるまじきことをやってます。10年やってんじゃねえのか、みたいな」 —(笑)。いい曲作れてるから全然いいんじゃないですか。しかしこのデビューシングルは『lost decade』より更に次世代感が出てるなあ。
tofubeats「2013年っぽいですよね」
—世代感あるし、洗練されてるし、単純にいい曲だし。また注目度が一層上がるんでしょうね。 tofubeats「結構困ったことになったなって、出来上がってから思いました」 —注目されるの、嫌ですか? tofubeats「僕自体の露出が増えるんで、それは大変だなと思いますね」 —でも認められたいし、相反する気持ちがあるんじゃないですか。 tofubeats「もちろん音楽やってるからには成功したいし、成功しないと出来ないことがいっぱいあるのも分かったんですよ。それこそ森高さんとやるのも、例えばビデオでバレエをやってる女の子を撮りたいとか、そういう自分がやりたいことをやるにしても。そもそもメジャーにいった動機は、別に音楽的な成熟とかじゃなくて、すごく好きな女優さんがいて、最終的にジャケなりビデオに出てほしいっていうことなんですよ。それはまだ叶ってないんですけど。でも一方では、本当は僕はプロデュースだけがやりたいというのはずっとあって。DJとかでさえあんまり仕事としていっぱいやりたくはないんですよ」 —矢面に立ちたくはない? tofubeats「そうっすね。一人なんで矢面に立つとしんどい。かわいくて曲書けて歌上手いとかだったらいいですけど、僕はかわいくないし、曲書けるけど、楽器も弾けなきゃ歌えもしないんで、矢面に立たなくてもいいじゃないかと思うんですよ。ちょっとしゃべれるくらいなんで。だからテレビの取材とかめっちゃありがたいし、曲が出てみんなが幸せになるんだったらいいんですけど、個人的には不安が大きいですね」 —また体調崩しそう……。 tofubeats「それ、本当に心配してます。でもなったらなったで、また休めるからいいかなと思いますけどね。いい意味でリミッター替わりになってるんで。これ以上ダメだよってときに体調悪くなってくれれば、tofubeatsはここが限度だってみんな分かっていくんで」
—ある程度まで成功しちゃうとそこからは自分で仕事量コントロールもできますもんね。
tofubeats「そうなるためにも曲をちゃんと作ることが自分のためというか、そんなに無理しなくていいよと言われるくらい実力がいるっていうことですからね。難しいんですよね。しゃべるのも好きだし、人と会うのも好きなんですけど、映像とかで出るのが嫌だって気持ちもあるし」
—バリバリ出てるじゃないですか、G.RINAさんとの“No.1”のPVとか。 tofubeats「面白ければいいんですよ、ああいうネタになるような。テレビにだけ出て新進気鋭の若手です、バーンってなるのが嫌なんで、全部友達のVJに渡して面白く加工してもらって供養するんです」
—供養って(笑)。 tofubeats「そうやって面白く使ってもらえれば出た意味があるというか、真面目に若手、新人って紹介されるのも良いですけどもみんなにいじってもらった方が楽しい。時代の寵児みたいにバーンって出ちゃうと困るんです。楽しくやるのをトップにおいてるんで。マネージャーにも『3ヶ月間辛いとしか思わなかったら会議しよう』ってずっと言われてて。そういってくれるスタッフもいるのでやれてます。気楽にやってないと、逆に森高さんとやりたいっていうような曲とか作れないと思うんで、あまり気負わないでやるというのは大事です。神戸にいるのもそう。東京だと『頑張ってよ』とか言われすぎちゃうんで。月に一回くらい言ってもらえればもう十分で、それ以上言われると気に病んじゃうんで」