—何も起きない日常を共に乗り越えるって気持ち、すごく大切ですね。 tofubeats「それは結構あります。音楽に意味がなくていいっていうのはやり過ごすためのものだから。芸術とかもそうじゃないですか。美術館に行ってどう思ったかより、美術館に行って潰れる時間が大事で。何も起きないから自分たちで起こしに美術館行ったりとか、クラブ行ったりとか飲みに行ったりするわけで。その選択肢が特に僕ら世代の大学生は飲みに行くくらいしかない。それを見て貧相やなと思ってたんですよ、ずっと高校のときから。飲みに行くしか遊び方がないって、何て乏しい人生なんだろうって。そう思うんだったら音楽を供給してあげなくちゃいけないっていうのはありますね。非日常っぽい行為というか、通学とかに音楽聴くのは何でかって言ったら、ちっちゃい非日常を持ち込むっていうことなんで」 —非日常過ぎるものだとまたちょっと違うっていうのもあって、今の音楽性なんですか? tofubeats「僕ができる度合いが日常寄りというか、離れすぎると普段聴けなくなるので。映画とかも好きなんですけど、映画って映画館に行ったり、DVDを座ってみるもんじゃないですか。音楽に関しては僕は持ち歩きたい派なんで、持ち歩ける程度のものにはしたいんです。自分が一番そうやって時間を潰してたんで。僕、10年間一貫校に通ってて、調べたら1万時間強くらい電車に乗ってるんですよ。1万時間強音楽をイヤホンで聴いてたので、音楽体験がイヤホンの方がメインなんです。制作より外で聴いてる時間の方が長いし、ってなると自然にこっちにチューンナップされていくというのはありますよね」 —実際には確かにそういう人の方が多いかもしれないですね。 tofubeats「ええ、作ってるときにもずっとそう思ってて。自分の音楽をちゃんとしたスピーカーで聴く人なんて稀にしかいないだろうなって。パソコンのスピーカーかイヤホンでしか聴かないんだったら、それに合わせて作るべきだって。だから一番最後はパソコンのスピーカーでチェックしますね」 —PCで聴く人が多いから。 tofubeats「そうですね、YouTubeとか。だから音がよくなくても全然いいって言う人が多い。さすがに僕は音はいい方が嬉しいですけど。でもそこは普通の人とは違うんだなと思いながらチェックするんです」 —普通の感覚を重要にしたいから。 tofubeats「はい。あと、普通の友達があんまりいないんで。そっちに音楽くらいは寄り添いたいというか。ずっとネットで音楽をやってるんで、それが交流のメインで、音楽と関係ない友達が2人しかいないんですよね。その2人は僕の曲を全く聴かないんで。ヒットすると余計嬉しいというのはそういうところも結構あって。やっぱり男子校問題は捨てきれないですよね(笑)。普通に何か、青春時代に楽しくなかった人は一生引きずるというか」 —そのぶん感性が鋭くなるかもしれない。 tofubeats「まあよく言えばそうですけど、僕は居酒屋でわーいとか言ってる方が羨ましいです。こんなスノッブになんでならなきゃいけないのかっていうのがちょっと嫌で。今はまだ作ってるんでどうにか発散できてますけど、そのうち絶対ややこしいおっさんになるんだろうなと思いながらやってますもん。そこはもう諦めてますけど。だったら音楽を作るしかないんで。いろんな人に、そこはどう頑張ったって一生治んないよって言われます。あと音楽でいくらこうなったところで全然ナンパとかしようとか思わないところがあるんですよ。クラブとか行って、声かけられても全く興味ない自分に結構ショックを受けるんです。それこそいわゆるメインストリームのDJって、結構みんなイケイケじゃないですか。女の子たちを引き連れて朝ご飯とか行くみんなを見ながら、すげえなって思いつつ僕はお疲れ様でしたって地下鉄に乗って帰る。でも人生ってこんな感じかなって」 —でも女の子は好きなんですよね? tofubeats「めっちゃ好きっす。ただ男子校に行き過ぎて、偶像の方に行き過ぎててしまってます(笑)」 —どんな女性が理想? tofubeats「別に好みとかもないですね。音楽にも興味なくて全然いいです。できた曲を聴いて、悪くないじゃんって言ってくれるくらいだったら十分です。僕に優しいんだったら誰でもいいみたいなところもちょっとあるっす(笑)」 —(笑)。今、優しくされてるでしょう? tofubeats「まあ優しい人多いですけど、でも僕とか斜に構えてるんで、ああもうどうせ曲が売れてるからだろうなとか思っちゃうんで。『女性にあんまり興味ないの?』って言われたりするんですけど。女性誌読んでるとかインタビューで言ってるし」 —どんな雑誌を読んでるんですか? tofubeats「赤文字系が好きで。やっぱり神戸なんで、ある程度お嬢様風が好きですね」
—偶像だ……。これまでのPVも何かね、ちょっと夢っぽい。 tofubeats「ああ、でもそうです。夢っぽいです。いないんだろうなって分かってるんですけどね。しかも共学の人が持ってる夢ではなく、男子校出身の僕の夢です。もう女性がバレエやってるのを5分撮っておくだけのビデオでいいんですよ。いずれやりたいんです。でもそういう女の子には自分みたいなやつとあんまり会っててほしくはないっていうのがあるんで矛盾してる」