—今はどう説明してるんですか? tofubeats「東京に来るのしんどいとか。あと褒められ過ぎると困るというのを一番言ってますね。調子乗るから、もう音楽作んなくなっちゃうっていう。こういう取材とかも受けれちゃうし、曲いいっすねって言われるし、モデルさんとかにも会えるし、同業者もいるし。リアルな話、東京だとアイドルにも仕事とかで挨拶にいけるじゃないですか。僕はアイドルと仕事してますけど、それはマズいと思うことの一つです。だから仕事したアイドルとかでも2年くらい挨拶行かなかったりします」 —それは自分の中のピュアなものを守るため? tofubeats「そうです。東京に来て、DJとかやってたら普通に芸能人の友達とか出来ちゃうけど、アカン、それは困るって思います」 —聖域がなくなると作る曲が変わりますよね。 tofubeats「はい。あと、音楽がその中にまみれるためのものになっちゃうというか」 —ああ、手段になっちゃうんだ。 tofubeats「東京には百回、2百回来てるんですけれど、僕は東京で育ってないので余計東京にいる人のための音楽のなりがちなんです。特にクラブミュージックは。それ、思い当たりません?」 —うん、わかります。 tofubeats「外から見ててそれを一番強く思うんですよ。クラブミュージック自体が東京のもんですから。で、地方の人がプチ東京気分でちょっと味わうもの。東京のものが上から下に降りていってるってことなんですよ」 —う〜ん、そういう部分もあるけど全面肯定はしない。 tofubeats「関西にもずっとブレイクコアとかあるし、そういう発展の仕方がもっとできるとは思うんですよ。でもあんまり誰もやっていないからベンチマークをするしかないってことでいるんです」
—でもちょっとずつそういう人たちはいて、名古屋とかも独特のクラブ文化がありますよね?
tofubeats「そうですね、名古屋も盛んだし、クラブの感じとかもいいですよね。でもそういうのでも結局チャートに入ってるもので考えるとね」 —ああ、そうなるとないかもしれない。チャートに入り出したら東京に行っちゃう。 tofubeats「そう。僕はiTunesでもメジャーな人たちを抜いて総合一位取ってるんで、そのまま神戸にいる方が面白いんです。あと一点集中だと思ってる人たちに対して、何か対抗したいっていうのがあります。これは単なるエゴですけど、東京に出てこいっていう人たちに対して、ちゃんと結果出したんで神戸に住んでていいですよねっていう。それはすごいありますね。神戸にいる状態で支持されてるものを何で東京に出て行かないといけないんだって。風土も含めてそこで出来てるものなのにって。まあ天邪鬼なだけって部分もあるんですけど。単純に一人で考える時間もほしいですしね。これがなくなると大変そうっていうのがあります」 —感覚のためにね。すごく客観的に考えられてるんですね。 tofubeats「それは地方にいるからです。東京に来るときは本当の意味でアクセスしてるんですよ。今朝も東京に来て、一日中取材が始まると楽しいじゃないですか。いろいろしゃべれて、聞くこともあって。で、いろいろイベントやって盛り上がる、人も来る、CDも売れる。でも新神戸に帰ると何にもない。絶対誰ともすれ違わないし、音楽やってる人とかとも会わない。でもそのワクワクしなさが大事というか、本当はこれが普通と思うんですよ。日本は本当はこういうところの方が多い。だったらそういうとこにいる方が日本のマジョリティに近いと思うんです」 —なるほど。 tofubeats「もちろん東京は最高ですけど、でもせっかく神戸に生まれて育ったんだったらね。正直、遅かれ早かれ東京に出てくることになると思うんですよ。今週も一日とかしか神戸にいないし。でもまあギリギリまでいると神戸の人も絶対嬉しいし、みたいなのはあります」
—でも神戸は都会ですけどね。 tofubeats「階層はもちろんあるんですけど、でも東京の特殊性みたいなものがずば抜けてるんで。東京以外って全部一緒やないですか。例えば県庁所在地の駅を降りたときの風景ってどこに行っても一緒でしょう。神戸はちょっと違いますけど、特に西日本なんて神戸以外の街は全部一緒ですよ。岡山、姫路、明石、山口とか、駅降りたら城下町が真っ直ぐバンとあって、銀行とか県庁とかどんどん建ってるっていう。大体行きましたけど、四国も全部そうですし、九州もほぼそうですよ。ってなったらそこに向けてチューンナップしていくというか、本当はそこに音楽が行き渡らなかったらおしまいで、本当に東京だけのものになっちゃうんで」 —東京にいるとそれ以外のスタンダードが分からなくなるというのはありますけど、東京対それ以外というよりは、各都市や階層で憧れ度合いが全然違う気がするんですよ。 tofubeats「関西はそういう意味では特殊ですね。京都、神戸の人は全然東京に移住したがらないし。九州でも今、別府とかもそうですよね。震災もあって、逆に東京から移住してますし。広島、岡山もそう。でも中心があるとしたらあとは外核ですから、その距離が違うだけで、その外核でどうやり過ごすかというのがある。友達とかもサラリーマンになってて、サラリーマンって絶対自分の街を動けないじゃないですか。で、どうやり過ごすかっていうのが問題になってくるわけですよ。地方の限られたコンテンツで日常をやり過ごす、その問題を共に解決していきたいっていうのもある。それは僕が社会人になれなかったからかもしれないですけど。例えばこれまで僕はサイゼリヤとTSUTAYAとブックオフを消費して生きてきてる。以前、インタビューでスペースシャワーが神戸に来たんですよ。神戸で普段行ってるとこへ連れてってくれって。連れて行ったのがフレッシュネスバーガーとブックオフ、あとハードオフ。そこで気付いたことがいっぱいありましたし、そういうのをやり過ごすための手段として音楽があるわけじゃないですか。それを語るんだったら東京に行っちゃいけないなっていうのもあります。何も起きないのが普通っていう考えがそこから来てるというか。東京に来ていろんなことが起きて僕も麻痺してきてて、森高さんと会うなんて絶対あり得ないことですし、最近神戸にいるときがつまんないなと思うようになってきちゃったんですよ。でも東京に来るのは投身というか、もうそっちの方に行ってしまいますって決めたら東京に来ると思うんですけど、今はまだ頑張ってキープ出来てるんで」