──家庭生活に破れ、故郷の函館に戻って職業訓練校に通う中年男性と、自分を持てあましながらも男に惹かれていく一風変わったホステス。演じた人物像については、それぞれどのように捉えていましたか?
オダギリ「これもまた、言葉で説明するのが難しいんですけれど……蒼井さんが演じられた聡(さとし)という女性は、どこか破綻してるキャラクターだと思うんですね。人としていろんなバランスを崩しているのが、誰の目にも見てとれる」
蒼井「そうですね(笑)」
オダギリ「それに比べると白岩という男には、あまり目立った特徴がない。訓練校には通っていますが、そこでの人間関係も付かず離れずという感じで、常に何となく笑顔を浮かべ、あたりさわりなく暮らしてるというイメージが、まずあります。でも実際のところは、彼は彼で破綻を抱え込んだ人物と思うんです。授業が終わると、いつもお弁当1つと缶ビールを2本買って帰るでしょう。で、テレビもないアパートで1人で夕食をとる」
──あの食事シーン、すごくよかったですね! 黙々と唐揚げを食べるところ。
オダギリ「あ、そうですか(笑)。それは初めて言われました」
蒼井「ははは。たしかに」
オダギリ「でもたしかに、あんな寒々しいところを見せられたら、この男も普通じゃないって感じはしますよね。あんな暮らしが続いたら、僕なら頭がおかしくなってしまう。結局、バランスがおかしいという部分では、白岩と聡は似通った役だと思うんです。現れ方は『動』と『静』みたいに対照的だけど、根っこは繋がってる。それで結局、惹かれあってしまうんじゃないかと」
蒼井「うん、うん」
オダギリ「ただ白岩の場合、それを隠すためにすべてを取り繕って生きているという部分も、人物像的には重要なポイントだったので。演じるうえでは『あくまで表面的には普通』という加減は、自分なりにずっと考えてました」