ーーどうしてジャニスの手紙にキャット・パワーの声を選んだのですか?
エイミー「 インターネットでインタビューを聞いたときにピンときました。たとえジャニスのことをよく知らなかったとしても、通ずるものがたくさんあると思いました。彼女なら十分にジャニスのことを理解できるだろうと思ったのです。彼女は女優ではなく、歌手です。彼女自身、南部からやってきた歌手として、多くの苦労をしましたし、同じ女性としてジャニスに強い共感を示してくれました」
ーー アレックスに聞きます。あなたはこの作品に制作として携わりましたか?それとも、プロダクション側にとどまっていたのですか?
アレックス「 エイミーは冒険家でした。彼女はジャニスの手紙や日記の奥深くまで、どんどん掘りさげ、ジャニスのパーソナルな部分に触れようとしており、とても感心していました。私は多かれ少なかれ利用される立場の人間です。私はエイミーを信頼し、彼女が納得のいくまで没頭できるよう、サポートすることにベストを尽くすことを心掛けました」
ーーアルバム『パール』を製作しているときのジャニスを観ていると、声の限りに叫んでいるデビュー当初からはずいぶん変わった印象を受けました。
エイミー「彼女は、ヘロインを絶ったときに人生の転換期をむかえたのだと思います。人生の終盤になってやっと、自分がアーティストとしてやっていけるという自信を持つことができました。最も悲劇的なのは、彼女が歌手としての手ごたえをつかんだ矢先に逝ってしまったことです。以前のように、無鉄砲に声を張り上げることはなくなり、美しく抒情豊かに歌う術を習得し始めていたのです。
取材していく過程で、彼女のことを良く知る全ての人たちの目の中に、罪悪感と後悔の念がみてとれました。もし彼女に対して何か違うことがしてあげられたら、彼女を救ってあげることが出来たのではないかと、彼らは自問していたのです」
アレックス「フェスティバル・エクスプレス・トレインで、ジャニスがギターを抱えて仲間たちと「ミー・アンド・ボビー・マギー」を歌った映像には感動しました。偉大なミュージシャンたちに囲まれて楽しそうに歌っている姿を観ていると、自分の歌に自信を持っていること、それは紆余曲折を経た彼女の歌手としての完成形を見せてくれているように思えます。
このシーンには心が震えました。もうすぐ終わる運命にある自分の人生を、彼女が悟っているのではないかと私には思えたのです。音楽的にはこれ以上ないほどに素晴らしい瞬間でしたが、ひとりの女性の人生としてみると、このシーンは悲劇的です。輝かしい未来が目の前に広がっていたのに、彼女は逝ってしまった」