——雨宮と越智は対照的な二人ですが、林さんと安藤さんと共演されていかがでしたか?
村川「実際も対照的な印象がありました。林くんはすごく真剣で、戦友みたいな感じ。現場でも全然話さないんですよ。向こうも雨宮のモードですし、私も園子のモードだから、横にいても全然話さないで、常にちょっとピリピリしたモードというか。雨宮という人物の描写が少ないので、演じるのも難しかったと思うんですよ。言葉一つひとつのニュアンスが難しいので、毎シーン、毎シーン考えて挑んでるんだなという、すごくまっすぐな感じがあって。私も冷めた目線ではありますが、演じるには熱をもって挑んでいるので同じまっすぐなぶつかり合いができた。最後は思わずありがとうございましたってハグしちゃうくらいの戦友でしたね。絡みのシーンの気の遣い方も本当に紳士でした。安藤さんは撮影の後半の方にいらっしゃったんですが、ファーッて海外の風が吹いたみたいな(笑)、すごく力が抜けてる方で。私もそれまでギューッとなっていたのが、安藤さんが来てほどけた感じがあって。それはこの役での越智との出会いともリンクするような感じもありました。話しかけてリラックスさせてくれるし、気を遣ってくださいました。バッて隠してくれたり、『見ませんよ』みたいな(笑)。とにかくお二人とも紳士で、私が良くなるようにということを考えてくださっていて、『ありがとうございます』しか言いようがないです」
——安藤監督は、前作でもそうですが、心と体の関係性を描かれていることが多いと思います。今作で、村川さんはその関係性をどう捉えられましたか?
村川「個人的には、身体と心はすごく矛盾してるところと、一心同体だと思うところと両方あります。でも今作は、感情とは別の部分で子宮が反応してしまう悲しさ——受け身である女性の悲しさ、孤独感などがテーマだと思っていて。実際、身体と心が一つになることって日常生活でもあまりないと思うんです。女性がまだ熱をもっていても男性は行為を終えたら既に冷静になっていることがあったり、その隙間にどうしたって空虚感はあって…。女性はそんなにシンプルじゃないんだって、正直に描かれてる映画かなと思います」
——そうですね。その空虚さや孤独感も知りながらの、園子のダイブの仕方が本当に格好いい。最後の笑みはすごく象徴的ですよね。
村川「きっと、園子の人生はこれからもっと波瀾万丈で過酷だと思うんです。出来上がった作品を観た時に、その始まりという恐怖も感じて。あの時は清々しく笑ってたけど、本当にこの後どうするんだろうと。人生の第2章のスタート、第1章の終わりという感じだと思っています」
——それでも園子は園子らしく生きていくんだろうと思いたいです。最後に、園子を演じて村川さんが得たことがあれば聞かせてください。
村川「監督と出会って、削ぎ落とすお芝居に挑めたことがひとつ。あと、この作品で女性というものを改めて自分も考えさせられて、27、8歳で出会うべくして出会った作品なんだなと、仕事としてもプライベートとしても思わされました。園子のように、強く飛び込めて、でも溺れてしまわない。そういう生き方って羨ましいし、すごく強い芯を持ってたくましく生きた人がいたということで、自分も観た方も心強い気持ちになってもらえるのかなって。その“芯”を大事にして演じましたし、演じることで自分にも芯が得られたような体験ができたのが嬉しいです」
撮影 中野修也/photo Shuya Nakano
ヘアメイク フジワラミホコ/hair&make-up Mihoko Fujiwara(LUCK HAIR)
衣装協力 銀座いち利/costume cordination Ginza Ichiri
取材・文 桑原亮子/interview & text Ryoko Kuwahara
『花芯』
8月 6日(土) テアトル新宿他全国公開
「きみという女は、からだじゅうのホックが外れている感じだ」―それが園子(村川絵梨)の恋人・越智(安藤政信)の口癖であった。
園子は、親が決めた許婚・雨宮(林遣都)と結婚し息子を儲けていたが、そこに愛情はなかった。
ある日、転勤となった夫について京都へ移り住んだ下宿で越智と出会い好きになってしまう。
生まれてはじめての恋に戸惑いながらも、自身の子宮の叫びは次第に大きくなり抑えられなくなっていく―。
<原作「花芯」について>
1957年(昭和32年)10月「花芯」を『新潮』に発表。
「子宮」という言葉が多く出てくることから発表当時「子宮作家」と呼ばれ、
その後5年間ほど文壇的沈黙を余儀なくされた。
原作:『花芯』瀬戸内寂聴著(講談社文庫刊)
監督:安藤尋 脚本:黒沢久子
出演:村川絵梨、林遣都、安藤政信 /毬谷友子
配給・宣伝:クロックワークス
製作:東映ビデオ、クロックワークス
製作プロダクション:アルチンボルド
制作協力:ブロッコリ、ウィルコ
2016年/日本/95分/ビスタサイズ/DCP5.1ch/R15+
(C)2016「花芯」製作委員会