——すごく好きなエピソードが、ヒダカがレイジの家でドラマの「ロングバケーション」を一緒に観て、その翌日に“LONG VACATION”っていうタトゥーを入れたっていう(笑)。
レイジ「本当におもしろすぎますよね(笑)。正月にウチで『ロンバケ』を一気観して。『ヤバい! 明日、俺タトゥー入れてくるわ』と言って、タトゥーのデザインを書き始めて(笑)。『これでいこ〜』って、本当にすぐ入れてきた。『だって、タトゥーって1回入れたら一生消えないから最高じゃない?』と言っていて(笑)。普通の日本人は1回入れたら一生消えないから迷うのに真逆の価値観で」
——ヒダカ的にそんなに『ロンバケ』がヒットしたんだ(笑)。
ヒダカ「あんまり思い出せないんですけどね」
一同「(笑)」
レイジ「ノリでしょ?」
ヒダカ「ノリ、ノリ。なんか海みたいなところでチューするよね?」
レイジ「ああ、川沿いのところでね。それラストシーン」
ヒダカ「それくらいしか覚えてないっす」
レイジ「酔っぱらって起きたらタトゥーが入ってることなんかしょっちゅうあるでしょ?」
ヒダカ「さすがにしょっちゅうはないけど、河原温って超偉大な現代美術家がいて、河原温が“I am still alive”って書いた電報を毎日世界のどこかから送るという作品があって。それを観たときにヤバいと思って、いま住んでる家の近所の遅くまでやってるタトゥーショップに行って『おまえが一番カッコいいと思う書体で“I am still alive”って入れてくれ』ってお願いしたら、超ダサい感じになった(笑)」
——レイジはヒダカのような生き方を羨ましく思うこともある?
レイジ「いや、羨ましいという感じではないですけど、自分がメジャーのフィールドで音楽活動をしていると、その対照にある本来のインディーのあり方としてはRIKI HIDAKAの様な存在が本物だなって思います」
ヒダカ「なんかいまは“インディペンデント”っていう言葉自体があまりにも軽薄なものに成り下がってると思う」
レイジ「俺はヒダカやヤンくらいポリシーがあるインディペンデントのアーティストが好きなんです。ヒダカはさすがだなっていつも思うし」
ヒダカ「そうじゃないんだよ。俺は結局そうしようと思ってるわけじゃなくて」
レイジ「そうにしかならないってことでしょ?」
ヒダカ「そう、それしかできない」
レイジ「それがいいんだよ。それがパンクだし、ロックだなと思う。インディーズのアーティストはこうあるべきだよなって。それしかできないから、一生そうなんだろうなというか」
——セルフブランディング云々を超越したアーティスト性でありマインドってことなのかな?
レイジ「そうですね。べつに自分で『俺はインディーだから』と公言することとは違うというか。俺らもメジャーだからうんぬんということを自分たちで言っているわけではないけど、メジャーのフィールドで活動しているポリシーや誇りはある。そのうえでグレーな感じで好きなように遊びたいとも思っているから、ヒダカやヤンの様なアーティストから学ぶことはがたくさんある。逆に彼らが俺らを見て学ぶことがあったらうれしいなとも思うんです。だから、GLUEでも『おまえら、本物のインディーズのアーティストのライヴを観たことないだろ?』っていうニュアンスでイベントをやるのが楽しいんです」
——レイジは自分がカッコいいと思ってるアーティストを紹介するのが好きだよね。
レイジ「好きですね。自分がカッコいいと思っているやつをプロモーションするのが好き」
——いまKANDYTOWNの外部ディレクターをやってるのもそうだし。
レイジ「そうですね。純粋にカッコいいと思えるやつらが周りに多くてうれしいんです。俺はつねにヒダカと何かを一緒に作りたいと思っているし、会う度に『レコーディングしよう』と提案しても、それが毎回実現しないのも運命的だなと思っていて」
ヒダカ「そういうことって全部タイミングだしね」
レイジ「ね。だから、実現するときはするだろうし、一生実現しないかもしれない」
ヒダカ「実現したら絶対におもしろいと思うけどね」
レイジ「うん。そんなに焦ることでもない。最近、自分の引きが強すぎて、運命や因果律みたいなことばかり考えてます。道で知り合いに会う頻度なんか尋常じゃないんですよ。人ってそういうことをまともに考えすぎると頭がおかしくなっていくのかなって。それくらい信じられないことが起きすぎる。そういうことがあるから、何事に対しても焦らないようになりました。そういう運命だしと割り切っているというか」