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大森立嗣監督『セトウツミ』インタビュー

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──高校時代って、そういう関係が違和感なく成立しちゃうんですよね。社会に出ると、まったく異質な友だちができるチャンスって、意外に少なかったりする。

大森「そう。だから『セトウツミ』って、儚いっちゃ儚いんですよ。こういう時間がいつまでも続くわけじゃないって、観る方がどこかで分かってますからね」

──エピローグも含め、ぜんぶで8つのエピソードが描かれています。マンガを脚色するにあたっては、何を意識されましたか?

大森「(チラシを指しつつ)今回、作品のメインビジュアルになっている、瀬戸と内海が並んで座ってるショットがあるでしょう。僕の中では最初から、この構図の印象がすごく強かったんです。要は観た後に、これに近いイメージが残る作品にしたかった。実は原作マンガの方は、もう少し動きがあって……。河原以外のシーンもけっこう出てきます。でも脚本化に際しては、そういうパートはあえて省いて。むしろ2人のやりとりだけで構成されてるエピソードを意図的に選んでいます。で、それを時系列に並べただけだと面白くないから、ほんの少し順番を入れ替えて。最後はヒロインの一期ちゃん(中条あやみ)で締めてもらったと。そんな感じですね(笑)」

──2人の男が延々、意味があるのかないのか分からない会話を続けてるところは、ちょっとサミュエル・ベケットの戯曲『ゴドーを待ちながら』を思い出しました。

大森「はははは、なるほど。今回の『セトウツミ』とは直接関係してないと思うけれど、俺、『ゴドーを待ちながら』大好きなんですよ。俳優ワークショップでお芝居を教えるときも、よく題材に使っています。あの芝居って、1つひとつのセリフの意味がよく分からないじゃないですか。意味の分からないことを、とにかくずっと言い続けてる」

──はい。

大森「芝居してるとね、どうしてもセリフを意味で分解したくなっちゃうんですよ。これは役者に限らず、僕らの日常がそうなのかもしれないですけど。でもそれって、けっこう人の手垢が付いちゃってるんだよね。自分で考えた気になってても、実は昔誰かが言ったことの反復だったり受け売りだったりする。『ゴドーを待ちながら』のセリフは、そういう堂々巡りからちょっと逃げられる感じがあって」

──でもそれって『セトウツミ』の2人のやりとりにも通じませんか? 「意味ありげな会話」という呪縛から自由だという意味では。

大森「ああ、うん、そうかもしれませんね。全然意識してなかったけど(笑)」

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