——なるほど。では、改めて『二重生活』という映画の魅力を教えてください。
門脇「いろんなとこに視線を置いていて、決まった導き方をされていないので、本当にいろんな見方が出来る映画なんです。珠に感情移入できる人もいれば、それぞれのキャラクターを見る人もいれば、尾行している珠をさらに尾行してそこに出ている人たちを観察しているような目線でも見れると思いますし、哲学や思考的な部分でも新鮮で興味深い。卓也とのシーンでの珠の心情など感情的に動かされる部分もありますし、単純に尾行してバレるかバレないかというスリルもありますし、いろんなものがある映画だな、と。しかも乾いた空気なのかと思いきやそういう映画でもなくて、『なんなんだ、これは!?』という作品になったのかなあと思います」
菅田「試写会で観て、自分が出ている作品の中で初めて普通に楽しめたというか、ちゃんとお客さんとして観れたんです。大体いつもマネージャーと一緒に観に行って、その後二人で話す時間でどういう映画だったかなというのがわかるんですが、この作品はずっと話していたくなりました。すごく好きだったんです。それが今おっしゃってた通り、いろんなエンタテインメントが詰まっていて、想像を越えるような展開もたくさんあるし、あるあるも詰まってるし、静かでもなければうるさくもない多角的な魅力で。あと、本当に人の、心拍数をグラフにしたような心地よさがあるんです」
——お二人はほぼ同世代ですが、俳優さんの中でも特に同世代の方々を意識するということはありますか?
門脇「何年生まれ?」
菅田「1993年の2月」
門脇「じゃあ同じ学年ですね」
菅田「世代意識はあります。仲もいいし、それぞれがパイオニアになってアイコンになって、気づいたら面白い世代になっていたらいいなとは思いますし、もちろん嫉妬とか小さいことはいっぱいあるんですけど、特に意識しているかというと、どうなんですかね」
門脇「そうですね。いろんなことが一周しているのを見てきた世代だから、そろそろ新しいことをやろうよとみんなが思っているんじゃないかなと感じています。客観的にも、同世代で面白い人がいっぱいいると思います。菅田さんとも今回共演して、またお互いが違う風になった時にご一緒にするのもすごく楽しみです」
——将来的に、この世代で見てみたい風景や作品はありますか?
菅田「僕らの世代というのは、いい意味でも悪い意味でも、なんでもあるんです。メディアもたくさんあるし、映画、ドラマ、舞台もそう。例えばうちの父親とかもうちょっと上の世代だと、ラジオから聴こえてくる曲をその一回で耳コピして弾けるように頑張ったりしていた。今は選択肢がありすぎるからこそ紛れてしまいがちなんですが、そういう労力を使ったらすごいことになるんじゃないかという爆発力がある人がいっぱいいるんです。だからみんなが頑張って爆発できたらいいなというか。なんか、そんなことのような気がします。具体的になんだというのは分からないですけど」
門脇「5年後、10年後と違う形でいいものになっているとは思うんですけど、今、若い時にしか出ないパワーがあると思うので、そのパワーが集結してる作品を観てみたいですね。『青い春』とか、分かんないですけど、何年後かにこのくらいの年齢になった子が観て、強烈になにか刺さるような作品が作れたらと思います」
撮影 中野修也/photo Shuya Nakano
企画・取材・文 桑原亮子/direction & interview & text Ryoko Kuwahara
『二重生活』
2016年6月25日新宿ピカデリーほか全国ロードショー R15+
原作:小池真理子「二重生活」(KADOKAWA/角川文庫刊)
監督・脚本:岸善幸「ラジオ」「開拓者たち」
出演:門脇麦/長谷川博己/菅田将暉/河井青葉/篠原ゆき子/西田尚美/烏丸せつこ/リリー・フランキー
配給:スターサンズ 公式サイト:http://nijuuseikatsu.jp/
(c)2015「二重生活」フィルムパートナーズ
大学院の哲学科に通う白石珠(門脇麦)は、担当の篠原弘教授(リリー・フランキー)から、ひとりの対象を追いかけて生活や行動を記録する“哲学的尾行”の実践を持ちかけられる。同棲中の彼、鈴木卓也(菅田将暉)にも相談できず、尾行に対して迷いを感じる珠。ある日、資料を探しに立ち寄った書店で、マンションの隣の一軒家に美しい妻と娘とともに済む石坂史郎(長谷川博己)の姿を目にする。作家のサイン会に立ち会っている編集者の石坂がその場を去ると、後を追うように店を出る珠。彼の秘密が明らかになっていくにつれ、珠は異常なほどの胸の高鳴りを感じていくーーー。