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デニズ・ガムゼ・エルギュ ヴェン『裸足の季節』インタビュー

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人生の伴侶である結婚相手を選ぶ権利、今私たちが当たり前に享受しているその権利が奪われた時に私たちはどう思うだろうか?

 トルコの田舎、伝統を重んじる保守的な村に住む5人の美しい姉妹。彼女たちは事故で両親を失い、祖母、叔父に引き取られる。学校の帰り道、海で男子生徒を交え、肩車をされてふざけていた彼女たちの行為を「淫ら」だと密告され、彼女たちは徐々にその自由を奪われていく。次から次へと見知らぬ男のもとへ嫁がされる姉の姿を見る末っ子のラーレは自分たちの自由を手に入れるためにある行動に出る。

 トルコのアンカラ出身の監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン。フランス、アメリカで映画を学んだ彼女のフィルターを通して生み出された処女作は、彼女自身がもつ美しさと強靭さ、そして少女の儚さ全てを兼ね備え、美しい御伽噺のように語りかけてくる。女性として生きる私たちの葛藤、そしてそれを乗り越える時に発せられる烈しいエネルギーについてこの作品を通し、多くの人たちと語り合いたい。

 

——トルコでは強制的な結婚というのは現在でも一般的にあるものなのでしょうか?トルコ国内での映画の反響はどんなものでしたか? 

デニズ「トルコ自体は多様性のある社会で、一方ではモダンな生活を送る人々がいて、その一方では非常に保守的な生活を送る人たちもいる。児童婚は現在トルコでは一般的なものではないけれど、わずかではありながら残っている慣習で、それに対して反発する人たちもいれば同じ価値観を持っている人たちもいるのが現状です。児童婚のような古いしきたりを守る層の人たちの中には、この作品によってあたかも自分たちが否定、裁かれたと感じる人たちもいました。そこからの厳しい批判の声もありました。この作品に出てくる女の子の目を通して、彼女たちが何を感じたか、何を見たか、それを作品に含むことによって、問題提起ができたと思います」

ーデニズ監督は女性の立場についてどう思いますか? 国や地域によってその自由度にも違いがあると思うのですが。 

デニズ「あらゆるところで平等には至っていないと思います。お金の稼ぎ方ひとつにしても男女という概念だけでなく不平等ではあると思います。最近、私たちがよく議論する題材として『女性はどのように給料を稼いでいるか?』ということがあって、会社でも役職に就くのはだいたい男性だと決まっているし、女性監督もマイノリティだと思うの。女性の力が制限されているのは明らかなんです。トルコにおいて悲しい状況が続いています。女性の価値を汲まなければならない状況でもそれがなされていないんです。トルコでは早い段階から女性の権利を保証する法律があったはずなのに、その状況が後退しています。トルコの現大統領であるエルドアン大統領は『女性と男性は平等ではない』と恥じることもなく明言していますし、『女性は母親になるために世の中に存在している』という彼の発言を支持する人たちがいて、それが私たちの日常の細かいところにまで影響を及ぼしているんです。ハラスメントや暴力が起こることもトルコでは女性軽視が一般化していることが原因になっています」

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