◎Sonic Youth with Lydia Lunch / Death Valley 69
―当時の音楽シーンとの関わりについて教えてください。
リチャード「リディア・ランチと一緒にショーをやったりしていたよ。彼女はスポークンワードをやっていて、僕がその後ろで映像を見せていたんだ。彼女はソニック・ユースと一緒に“デス・ヴァリー69”という曲でビデオを作っていて、何かスペシャルなものを作れるアーティストを彼らが探していた。そこで僕に依頼が来たんだ。それがきっかけでソニック・ユースに会ったんだよ。ビデオを監督していたのは僕ではなかったのただけれど、僕がビデオのヴァージョンを作ってもいいかと頼んだんだ。それで、気合を入れて自分のヴァージョンを作った。そしたら、彼らは僕のヴァージョンの方を気に入ってくれてね。そこからたくさんのミュージシャンと知り合いになっていったんだ」
―そのリディア・ランチやソニック・ユースも含めたノー・ウェイヴ・シーンと当時のカーンさんの作品との間には、互いに共有する価値観や美意識のようなものがあったように思いますが、いかがですか?
リチャード「ノー・ウェイヴは僕の世代よりも前に始まった。だから、僕はもっとパンクにハマっていたよ。セックス・ピストルズや、アナーキーなものが好きだった。ノー・ウェイヴも音楽に関してはアナーキーだったけど、パンクは、その姿勢がアナーキーだったからね。ノー・ウェイヴのファンたちは、自分たちのルックスにこだわりすぎていたと思う(笑)。あれはファッション・ムーヴメントだったから。でも、今考えてみると、ノー・ウェイヴの方が音楽的にはパンクだっかも。パンクの音楽は普通のロックンロールだけど、ノー・ウェイヴでは伝統的な音楽を崩そうとしていた。それに関して言えば、僕にとってはリディア・ランチが一番パンクなミュージシャンだった。彼女はパンクであり、ノー・ウェイヴであったと思うね。彼女は新しい音楽を追求していたから」
―では最後に。カーンさんの作品には、銃を持った女性がよく出てきます。カーンさんにとって、“銃を持った女性”とは何を象徴しているのでしょうか/何かの象徴なのでしょうか。
リチャード「僕が作る映像のほとんどが、女性との関係を表している。僕にとって、女性は怖い存在だから、それを表現するのに銃を使うこともあるんだ(笑)。銃でその強さが強調されるからね。同時に、ドラッグをやっていると、銃を持ちたくなる。全てが怖くなるから、そういったものを持ちたくなるんだよ。銃をいくつも持っている友人が2人いてそれを見てきたけど、僕はそれを使う代わりに、作品の中で使っていたんだ。それに関しての映像作品も作ったこともある。そんな感じさ(笑)」
◎x is y
撮影 中野修也/photo Shuya Nakano
ヘアメイク yoko ( the oversea )/hair&make up yoko ( the oversea )
取材・文 天井潤之介/interview & text Junnosuke Amai
企画・編集 桑原亮子/direcion & edit Ryoko Kuwahara
展示会場 ICON (http://icontky.com)
リチャード・カーン
フォトグラファー /ムービーディレクター
Sonic Youth のMVのディレクションをはじめ、 Purple Fashion や DAZED AND CONFUSED、Vice、Playboy マガジンではフォトグラファー / コントリビューターとして活躍。 80 年代のポルノシーンから生まれた被写体を切り取る独自のシューティング、ライティング手法はファッションシーンに影響を与え、写真とともに数々のミュージシャンのムービーを手がけ、その活動は多岐に渡る。1980年代のNYの The Cinema of Transgression(反逆の映画)と呼ばれるムーブメントの創設者。 Vice, Purple, Dazed and Confused, GQのフォトグラファーとして活躍。 3年前に-8フィルム「リチャード・カーン-ハードコアコレクション」をウォーホル財団のサポートによってHDビデオで高品質で再現。モスクワ「The Garage Center for Contemporary Art 」、ベルリン「 KW Institure for Contemporary Art」、パリ 「Cinematheque Francaise」、NY「Anthology Film Archives」において、これら幾つかの作品を発表している。 2016年、「近代美術館- Museum of Modern Art」にてムービーを上演する。