−−河田さんがコンセプトや下絵を描き、細貝さんがそれをバルーンで形にしていくとのことですが、制作の時はどのような話し合いをされるんですか?
細貝「私は小さな頃から考えるより手を動かすタイプで、こんなことをやりたいと言うことはあまりないんです。ただ、こういう形を作るにはどうするかというようなことは常に考えていて、頭の中で練習していたり。なので、言うとしたら、こんな形を作ってみたいということ。それを受けて河田が『こういうことを表現したいからその形を活かしてこんな全体像を作ろう』と提案してくれます」
−−ビョークのDNAドレスを制作されたことはDAISYBALLOONの名前を世界に浸透するきっかけになったと思いますが、彼女が作品を見てオファーしてきたのですか?
河田「実は、僕の夢はビョークにバルーンドレスを着てもらうことだったんです。作品は常に作り続けていましたので、どこかで見てくれたのか、2013年の1月に連絡を頂きました。ロンドン公演で着たいということだったんですが、タイミングが合わず日本の野外フェスティバル『フジロック』でという話になりました。『私が宇宙となり、サイエンス(科学)とアース(地球)で私を取り巻いてほしい』という彼女の希望がありましたので、そこから半年ほど案を出し続けました。ドレスの形状は、DNAの二重螺旋は決まっていましたので、まずは、DNAに詳しい専門家の方にお話しを聞きに行ったり、とことんリサーチから入りました。また、過去ライブ上でのビョークの動きを研究してドレスの構造を練りました」
——そこからラフォーレ原宿の広告ヴィジュアルへの作品提供など、様々なお仕事がありますが、最新の展示は京都での作品と写真の展示ですよね。
河田「そうです。ビッグバン=誕生というところからテーマを広げて、個展という形で一ヶ月間開催しました。KYOTOGRAPHIE(京都国際写真展)と同時期なので、写真展に近い見せ方にしましたが、立体作品も入れています。通常は咲いている(膨らんでいる)状態のバルーンを出すのですが、今回は劣化した状態で出すことで、最終形がどうなるかをオブジェとして見せる予定です。劣化したもののほうが意味合いが深くなり、プロセスを感じられる。かつ、最終的な作品の形態がここにくるんじゃないかということで」
——バルーンは空気を入れた瞬間からしぼんでいくものですから、命のプロセスと言えます。「ビッグバン」というテーマはどのようにして設定されたんですか?
河田「去年の5月から僕が何もビジュアルが作れなくなってしまって。よくよく原因を考えてみたら、生活している中で何か問題が発生してそこから作品が生まれていたのが、恵まれた環境にいて問題がなくなったことで作品を生み出せなくなっていたんです。昨年2冊目となる作品集『METAMORPHOSIS』を作ったんですが、表現したいものを出し尽くして、マスターピースに近いものが出来たというのもあったのかもしれません。それで問題がないという問題に着目して作品を作ろうと、最初はコンセプトもなく、とにかくビッグバンという爆発を作る過程の中で気付いていくものがあるはずだと、細貝にコアから作り始めてもらいました」
細貝「でも下絵は描いてましたよね」
河田「ただそれが何を意味するのかわからないから、半年間くらい作り続けてもらって」