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真木よう子『海よりもまだ深く』インタビュー

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みんながなりたかった大人になれるわけじゃない──。是枝裕和監督の最新作『海よりもまだ深く』で描かれるのは、かつて夢見た未来とは少しずつ違う今を生きる大人たちだ。その味わいは、どこか苦くて切ない。それでいて観終わった後、目に映る世界が(まるで台風の翌朝の芝生のように)少し輝いて見える。そんな不思議なドラマでもある。

阿部寛が演じる主人公の良多は、女房に愛想を尽かされたダメ中年。15年前に一度だけ文学賞を獲ったものの、その後は鳴かず飛ばずで、周囲に「小説のための取材」と言い訳しながら興信所に勤めている。そんな男だ。今回、真木よう子が演じたのは、その別れた妻・響子。描かれる日常はどちらかというと平穏で、特に大きな事件が起きたりしない。でも映画全体を通じて、シングルマザーの抱えるいろんな事情や感情が、スクリーンから豊かに伝わってくる。2013年の『そして父になる』以来、2度目の是枝組参加となる彼女に、作品への思いを聞いた。

 

──真木さんが演じた響子は、ダメな夫と離婚し、1人で子供を育てているしっかり者の女性です。とりたてて変わったところのない市井のキャラクターだからこそ、女優としてすごく繊細な感情表現が求められた気がするんですが?

真木「うーん、どうなんだろう(笑)。自分ではあまり意識してないんですよね。楽しいシーンは楽しく、切ないシーンは切ない感情でお芝居していただけで…。是枝監督の脚本に素直に演じていたら、自然にそうなったんだと思います。ただ、この物語の中で響子という女性が、わりと複雑な立場にいたのは大きかったかもしれませんね」

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