―そういえば去年、アルバムのリリースに合わせてミックステープを公開してましたよね? 『EE-BEY-EE』ってタイトルの。
リサ「あのタイトル、ウケるよね(笑)」
―もともとミックステープを聴いたり作ったりするのが好きだったりするんですか?
リサ「うん、大好き。自分たちの音楽がどういうもので、どういう音楽に影響を受けてるのかっていうのが伝わるし、自分の好きなアーティストがどんな音楽を聴いてるのか知って、そこからまた新たに好きな音楽を発見できたりするのって、すごくいいよね」
―ケンドリック・ラマーやディアンジェロに挟まれてケイト・ブッシュの“嵐が丘”があったのが面白くて。
リサ「えーっ、意外かな? 大好きなの。っていうか、ほんとに何でも好きなの。そこがミックステープの狙いでもあるわけでしょ? ヒップホップが好きだからって何もヒップホップだけに集中しなくちゃいけないってことじゃなくて、何だって自分の好きなものを聴いたらいいんだっていう。そのうち初めはちょっと変だなと思ったものも、次第に病みつきになったりして。その良い例がゴールド・チューンよ。最初にゴールド・チューンを聴いたときには全然理解できなかったの。それが何年か後に友だちからゴールド・チューンを歌ってって頼まれて、初めて真剣に聴いてみたんだけど、そこからもう見事にハマったて感じ。頭で理解しようとしたんじゃなくて、本当に感覚のレベルで理解できたのね。あの衝撃と感動は本当に忘れられないなあ……。だから、私たちも普段からインタビューで、何だって自分が好きだと思うものを自由に取り入れていったらいいんだよってことを伝えてる」
―なるほど。対して、ケンドリック・ラマーやディアンジェロの作品に代表される、生演奏やバンド・アンサンブルというものを捉え直すクリエイティヴな姿勢やプロダクションの追求、またそうしたなかでヴォーカルやコーラスをいかに機能させるか、みたいなアプローチは大いに刺激を受けるところだったりするのではないでしょうか?
リサ「うん、ケンドリックとは絶対にコラボレーションしたい(笑)! 本当に刺激を受けるし……アーティストのなかには、ものすごく奇怪なことをやりつつも、クールでみんなから憧れられてるような存在っているじゃない? 常人の感覚とはかけ離れてるんだけど、それでもコマーシャルで人気があるっていう。その両方を同時にやってのけてる人がものすごく好きで。普通とは違うことをやりながらも、みんなに愛されて親しんでもらえることは可能なんだっていう、ケンドリックやディアンジェロなんかまさにそのお手本みたいな存在だよね」
―それこそグラミーみたいな大舞台で表彰を受けながら、アンダーグラウンドでも支持されるような存在っていうのは、ふたりが理想とするところでもありますか?
リサ「もう、まさにそうよ」
ナオミ「私たちもその両方から支持されたい(笑)!」
リサ「すべてのミュージシャンが目指してるところはそこなんじゃないかな? 音楽通のクールな人たちからも愛されたいし、普通にそこらへんを歩いてる人たちにも楽しんでもらいたいっていう。アーティスティックな楽しみ方もできて、しかも、みんなに普通に歌ってもらえる曲とかになったら最高だよね」
―そうなると、次のアルバムが楽しみになりますね。どんな感じになりそうですか?
2人「(声を揃えて)ヒップホップよ」
―おお。
ナオミ「今以上にヒップホップ寄りにね!」
リサ「ファーストは今でも好きだし誇りに思ってるけど、新しくアルバムを作るからには1枚目とは違うものにしていかないとね」
ナオミ「今は踊らせたいモードなの。ファーストでは切ない想いをさせて泣かせたから、今度は踊らせたいっていう。次のアルバムではぜひ踊ってほしい! まあ、好きなように楽しんでもらっていいんだけどね。でも、とりあえず踊りは外せないわね(笑)」
―そのアルバムにケンドリックとプリンスが参加することになったら最高ですね(笑)。
リサ「いつか実現しますように!」
撮影 永瀬沙世/photo Sayo Nagase取材・文 天井潤之介/text Junnosuke Amai企画構成・編集 桑原亮子/direction & edit Ryoko Kuwahara
Ibeyi『Ibeyi』
(XL / Hostess)
発売中
※ボーナストラック2曲、歌詞対訳、ライナーノーツ付
※最新アルバム『Ibeyi』iTunesにて配信中
https://itunes.apple.com/jp/album/ibeyi-bonus-track-version/id934736952?app=itunes&ls=1&at=11lwRX
Ibeyi
21歳のフランス/キューバ出身、ナオミ・ディアスとリサ-カインデ・ディアスの双子によるデュオ。キューバを代表するパーカッショニスト、ミゲ ル“アンガ”ディアスを父親に持つ。 英語とナイジェリアなどで使われているヨルバ語で歌い、彼女達のサウンドは自然を愛する彼女たちの伝統的要素とフランク・オーシャン、ジェイムス・ブレイ ク、キング・クルエルなどパリに住むティーンエイジャーらしいモダンな音楽など幅広い影響を受け、独自のミニマル・サウンドを築き上げている。 リチャード・ラッセルをプロデューサーに迎えたデビュー・アルバムを2015年2月にリリースした。