ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブにも参加したキューバを代表するパーカッショニスト、ミゲル“アンガ”ディアスを父に持つフランス育ちの双子姉妹デュオ、イベイー。中南米の伝統楽器を叩いたビート・メイク&プロダクションを担当する姉のナオミと、鍵盤のメロディにヴォーカルと歌詞をのせる妹のリサ=カインデ。ふたりのルーツであるヨルバの儀式音楽とヒップホップやR&B等のモダンなエレクトロニック・ミュージックを織り合わせた独創的なサウンドが評判を呼び、昨年リリースされたデビュー・アルバム『Ibeyi』はワールドワイドで高い評価を得た。そんなふたりは先日、初めての来日公演を開催。プリンスやボビー・ウーマックも惚れ込んだスピリチュアルでコンテンポラリーなイベイーの音楽の秘密、そしてふたりのバックグラウンドについて聞いてみた。
―日本に来ていちばん驚いたことは?
ナオミ「(フランス語で)あれ、何て言うんだっけ?」
リサ「カジノみたいな、ビデオゲームができるところで……(携帯で撮った動画を見せてくれる)」
―ああ、ゲームセンター。「太鼓の達人」ですね、それ。
リサ「しかも、すっごい子供みたいな子たちが遊んでるのよ!」
ナオミ「そう、みんなすごく若くて」
―いや、若いっていっても、たぶん18歳ぐらいですよ。で、ふたりは「太鼓の達人」やらなかったんですか?
ナオミ「ノー、ノー、ノー!!!」
―上手そうですけどね、「太鼓の達人」。ところで、これまで世界のいろいろな場所をツアーで回られてきたわけですが、そのなかで自分たちの音楽について新たな気づきみたいなものはありましたか? たとえば、自分たちの音楽のオリジナリティやアイデンティティに対する自覚がいっそう深いものになったのか、それとも、音楽性は違うかもしれないけどアイデアや考え方は自分たちに近いかも、みたいな発見があったりとか?
ナオミ「やっぱり、私たちはユニークだなって。すごくユニークな音楽をやってるって実感した。私たちの音楽の何がユニークかって言ったら、ミクスチャーっていう部分なのよ。それと同時に、いろんな音楽を耳にするなかで、いろんな音楽と自分たちの音楽との共通点も感じるのね。ただ、私たちの音楽は特別……っていうんじゃなくて、むしろ他とは違う点は、私たちがそれをガンガンにミクスチャーしてるってことなのよ。いろんな音楽をごちゃ混ぜにすることに何の抵抗もないの。だから、オリジナルというよりも、他とは違うってことなのよ」
―音楽的な刺激を受けるような出会いはありましたか?
ナオミ「もうたくさん!」
リサ「プリンスにも会ったし! すごくたくさんの魅力的な人たちに出会えた。有名な人もそうでない人も、すごく美しい人たちに囲まれていたなって感じ」
ナオミ「ただ、それと同時に意外だなって思ったのは……私は最初に音楽を始めたときに、みんなと繋がれると思ってたのね。去年から今までのあいだに、何百人何千人の人たちと出会ってきたんだけど、本当に心の底から通じ合えたって思えたような出会いは、本当にたまにしか起こらないの。本当に心から通じ合えたと思えた人は何千人中のたったの4人、って、それだけよ。でもその4人との繋がりは、自分にとって本当に特別なの」
リサ「JR(※『Inside Out』『Women are Heroes』等のプロジェクトで知られるストリート・アーティスト)に会ったし」
ナオミ「すごく仲良くしてて!」
リサ「昨日もチャットでメッセージを送ったばかりだし(笑)。うん、やっぱそんな感じよね。いろんな出会いを経験して、そこから通じ合うことによって、自分たちも変化して成長して行ったっていう感じ」
ナオミ「別に有名人でなくったって構わないのよ。それよりも人との繋がりを感じられるかどうかの方が大事」