――今年、ライゾマティクスはどのようなプレゼンテーションを予定されているんですか?
齋藤「僕たちは六本木ヒルズのMATラボで展示をするんですが、せっかくラボという名目の場所でやるので、身体と空間が直結するとどうなるかという空間実験をやります。『SPACE EXPERIMENT #001, 002, 003』は、52階から見える素晴らしい景色を活かして、もしも脳波によって景色が変わるとどうなるかという試みです。以前MATで脳波によってモノを作るとどうなるか(作品名)という作品をつくりましたが、それに近い実験的な感じで。あと、関わってるのはボディスーツ(Rez Infinite -Synesthesia Suit)ですね。どれも実験的な、他のギャラリーではできないようなことをやります。僕は東京は意外と実験する場所がないと思っているんです。商業が絡むと失敗はNGじゃないですか。MATの良さは、型が決まっていないのでその実験が思い切りやれるところ。今回も拠点がたくさんありますけど、その中で色々実験をして、いいと思ったものは街にインストールすればいいし、ダメだと思ったものは来年違うものを作ろうとか、どちらかというとキャンバスに近いようなことをしている。参加アーティストも、文脈はしっかり作っていきたいので大先輩も若手も入り混じった構成にしていますが、がっちりキュレーションはしていない。そこがすごくいいところだと思ってます」
谷川「インバイト制で、みんなが面白いよと連れてきた人をそのまま受け入れる感じです。でもそこで中途半端に参加すると比べられた時に辛い思いをするので、ポテンシャルはあったほうがいいとは思います。ノミネーションされながらも参加できなかった人もいるし、想像してないところから飛び込んできた人もいる。でも結果的には収まる。これはラボで実験だから、この文脈性に評価はなくてもいいと思ってるんです。ただみんなが各々で面白い発信をして、競いあうことが大事。サローネは、面白いという評価を得るためにアーティストが命がけでプレゼンテーションをやっていて、そこに対するエネルギーがイベント全体をものすごく盛り上げている。わざわざ見にいく価値があると言わしめるモノは激しい競争の中から生まれてきているので、MATもそうしたアウトプットやパフォーマンスが見せられる状況ができれば、必ず遠くからでも人を呼ぶことができるようになると思う。そして来てみれば街も面白いし食事も最高だったよとなるはず。この想像を超えた巨大な都市の中に点在しているコミュニティの持つ多様性をポジティブに感じてもらえればいいかなと。テクノロジーだけじゃなくて日本という文脈も感じてほしいし、次世代に渡すべきイケてる領域を創造すること。これってオトナの責任だと思うんですよ」
――そういう想いを形にしていると。
谷川「第1回の時に披露したリリースがあるんですが、民間の民間による民間のためのということを掲げていて、土地を持っている人は土地を提供する。メーカーはプレイスメントでモノを貸し出して、作家はそれによって作品を作り、自分の知恵を出す。みんなでドネイトしながらすごい表現を作ろう、それを核にして新しいビジネスモデルや集客のプロトタイプなど全部を実験という名のもとに目に見える形にしていこうと。
東京をプラットフォームとしてヴィジョンを打ち出したいと思います。技術は瞬時に追い越される可能性があるけれど、ヴィジョンは簡単には凌駕できない。なぜなら技術はそのヴィジョンを形作るために日々進化するものなので、アウトプットされた瞬間から経年化されていくものだから。だからみんながMATをきっかけに集まり、利用してほしい。いろんなところから接点が生まれ、テックフェスのような感じで楽しくヴィジョンや可能性を見いだせれば素晴らしいことだとおもうんです。やっぱり何事も楽しくないとダメですから」
齋藤「うん、楽しくないと何も続かないですよね」
撮影 中野修也/photo Shuya Nakano
企画編集・取材・文/edit & interview Ryoko Kuwahara
MEDIA AMBITION TOKYO 2016(メディアアンビショントーキョー2016)”
主催:MAT実行委員会(六本木ヒルズ/ CG-ARTS協会/ JTQ Inc. / Rhizomatiks)
会期:開催中-3月21日(月)
会場:
01. 六本木ヒルズ(六本木)
02. INTERSECT BY LEXUS ‒ TOKYO(青山)
03. IMA CONCEPT STORE(六本木)
04. アンスティチュ・フランセ東京(飯田橋)
05. デジタルハリウッド大学(御茶ノ水)
06. Apple Store, Ginza(銀座)
07. Apple Store, Omotesando(表参道)
08. TSUTAYA TOKYO ROPPONGI(六本木)
09. 代官山 蔦屋書店(代官山)
10. チームラボ(水道橋)
11. 寺田倉庫(天王洲)
12. 日本科学未来館(お台場)
http://www.mediaambitiontokyo.jp/
谷川じゅんじ
スペースコンポーザー/JTQ 株式会社代表。
1965年生まれ。2002年、空間クリエイティブカンパニー・JTQを設立。 「空間をメディアにしたメッセージの伝達」をテーマにイベント、エキシビジョン、インスタレーション、商空間開発など目的にあわせたコミュニケーションコンテクストを構築、デザインと機能の二面からクリエイティブ・ディレクションを行う。
齋藤精一
株式会社ライゾマティクス代表取締役。東京理科大学理工学部建築学科非常勤講師。1975年神奈川生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からNYで活動を開始。その後ArnellGroupにてクリエティブとして活動し、2003年の越後妻有トリエンナーレでアーティストに選出されたのをきっかけに帰国。2006年にライゾマティクスを設立。2009年-2014年国内外の広告賞にて多数受賞。2013年D&AD Digital Design部門審査員、2014年カンヌ国際広告賞Branded Content and Entertainment部門審査員。2015年ミラノエキスポ日本館シアターコンテンツディレクター、六本木アートナイト2015にてメディアアートディレクターを務める。