女性アーティストやクリエイターが、サウンドトラックを軸に心に残る映画を紹介する新連載がスタート。
初回は、バンドから執筆、イラスト、ショップオーナーなど多岐にわたる活動でガールズカルチャーを牽引する多屋澄礼がセレクターとして登場。
The Fabulous Stains – “Professionals”
「レディース・アンド・ジェントルマン・ファビュラス・ステイン」
アレクサ・チャンがお気に入りの映画として上げている「ファブラス・ステイン」。この最高にクールなガールズバンドの映画が日本でメジャーじゃないのは心底納得がいかない。目の上にいれた赤いアイシャドウ、サイドを刈り上げたヘアースタイルもGrimesなどの女性ミュージシャンたちに影響を与え続けている。The Fabulous StainsがShaggsのようにローファイなガレージバンドなのも素晴らしい。スキルよりも初期衝動に身を任せる3人の女の子たちの生き様から学ぶことは沢山ある。
Sonic Youth – “Kool Thing”
「シンプルメン」
ハル・ハートリーが愛するオルタナティブな感覚を誰かと共感すると嬉しくなる。私はSonic Youthの”Kool Thing”が使われたこのシーンを観る度に、女ひとり、男ふたりの組み合わせも含め、ゴダールの「はなればなれに」でアンナ・カリーナが帽子をくるりと翻しながらステップを踏んで踊るシーンを連想せずにはいられない。60年代に作られたあのシーンを90年代に変換する時に、小洒落たジャズナンバーをソニック・ユースに置き換える所がハル・ハートリーらしくて、更に夢中になってしまう。
Air – “Cherry Blossom Girl”
「ロスト・イン・トランスレーション」
春は出会いと別れ。春風に吹かれて心が感傷的になるのは、きっと桜を観る度にAirのこの曲を思い出してしまうから。ビル・マーレイ、スカーレット・ヨハンソンというミスマッチさがソフィア・コッポラらしいというか、直球ではなく、変化球で勝負するところはそのキャスティングだけでなく、曲のセレクトにも彼女の趣向が強く反影されている。The Styxがクールだってことを教えてくれたのはソフィアでした。ドリーミーなこの曲を聴きながら東京を歩けば、きっと今までとは違う、ソフィアのフィルターを通した美しい日本が見えてくる。
Paul Simon – “Me And Julio Down By The Schoolyard”
「ロイヤル・テネンバウムズ」
ウェス・アンダーソンの作品のどの場面を切り取っても完璧である。熱狂的なファンを生み出しているのは、聴覚、視覚のふたつの要素がウェス・アンダーソンの美学に溢れているから。「ダージリン急行」でのThe Kinksの使い方は目から鱗だったし、「ロイヤル・テネンバウムズ」でのRamonesの使い方だって今までに何度も使われてきたのに、ウェス・アンダーソンの作品では何倍も輝いている。ニューヨークの街を疾走するシーンでPaul Simonのこの曲が流れるシーンが大好きすぎて、何度もリピートしてしまったのはきっと私だけじゃないはず。
The Smiths – “Please,Please Please Let Me Get What I Want”
「フェリスはある朝突然に」
「プリティー・イン・ピンク」が公開から30周年とのことで人気が再熱中のジョン・ヒューズの作品の中でも軽快かつウィットに富んだこの作品。ジョン・ヒューズは10代の心の痛みを誰よりもリアルに描く天才だった。彼がこの作品のクライマックスで選んだ曲がThe Smithsだったのが面白い。イギリスとアメリカ、国は違えど、10代独特のあの感情は共通しているし、それを同居させる事によって、よりメッセージ性が強くなっている。
多屋 澄礼(たや すみれ)
KBS京都ラジオで番組「多屋澄礼のNew Kyoto」でのパーソナリティ、DJ、執筆、イラストレーターとして、Twee GrrrlsClubのリーダーとしてVeronica Falls、Pascal Pinon、Hunx And His Punxなど海外アーティスト招聘など音楽を軸に活動。ショップViolet&Claireのオーナーでもあり、2016年2月1日には東京に新しく”SiS”をオープン。
http://www.violetandclaire.com / http://tweegrrrlsclub.blogspot.jp