――2013年にリリースされたセカンド・アルバム『No Deal』は、さらにベース不在で、メラニーさんのヴォーカルとフルート、鍵盤楽器とドラムという変的な編成で録音された非常に音数が少ない作品ですよね。
メラニー「セカンド・アルバムのバンド編成が変則的になったのは全くのアクシデントなの(笑)。制作の半年前に、考え方の違いから、コントラバス奏者が抜けてしまったんだけど、長年、一緒に演奏していたプレイヤーだったから、代わりに別のプレイヤーを入れようという気持ちにはならなくて、コントラバスの不在を別の楽器で補うことにしようと考えたわ。だから、『No Deal』は、バスドラムのキックのなかにも、クラビネット(鍵盤楽器)のなかにも、アナログ・シンセサイザーや私が吹くフルートやヴォーカルのなかにもコントラバスの音があるという、そういう考え方で作品を作ったの」
――そのアクシデントで生まれた欠落をただ単に埋め合わせるのではなく、別の発想で解釈、発展させたことで、『No Deal』は個性的な作品になりましたね。そして、個性的ということでいえば、メラニーさんご自身の音楽遍歴も、クラシックのフルートからはじまり、その後、歌を歌い始めて、一時期はニルヴァーナがお好きでバンドをやっていたこともあるということで、ジャズ・ミュージシャンとしてユニークな音楽的バックグラウンドをお持ちですよね。
メラニー「物事のスタイルというのは、これと定義出来るものってないと思うの。全てがエキサイティングで、全てが活き活きとしていて、それぞれに美しさがあると思うし、私は好奇心をもって、あらゆるものを見ていきたいと思っているわ。私が子供の頃、日曜日の朝は祖母がクラシック音楽を聴いていたので、自分のなかで日曜日の朝の音楽は、クラシックだと思っていたし、ニルヴァーナに影響を受けて、自分が作った曲でバンド活動していた高校生時代を経て、王立音楽院に進学することになるんだけど、それは家でも活き活きと歌を口ずさんでいる私の様子を見た母から、「音楽が好きなんだったら、その道を進んでいいわよ」って後押しをしてくれたから。その王立音楽院には、クラシックとジャズのコースがあったんだけど、私には、クラシックよりジャズの方がブルースを感じられたから、ジャズを専攻したの」