──では、今回の『La Di Da Di』というアルバムを通じて、バトルズの3人はどんな体験を生みだしたかったのでしょう? あえて言葉にするならば。
ジョン「それもまた難しい質問だね(笑)。まず基本的なところでいうと、僕たち3人は常に、あらゆる要素を採り入れてユニークな音楽を作りたいと思っている。安直にジャンルできないようなものをね。たまに僕らの音楽を「マスロック」って呼ぶ人がいるけど、個人的にはあの言葉が大嫌いなんだよ」
──あ、そうなんですね(笑)。
ジョン「好きじゃないね。だって、いくら変拍子を多用してるからって、すごく安直な響きがするだろう。そもそも、数学(mathematics)が好きだったらミュージシャンにならずにエンジニアになってるから(笑)。逆に、そういうジャンル定義にこだわらずにいろんな要素が入ってた方が、いろんな人に聴いてもらえるじゃない。実際、僕の友人にはロック好きからヒップホップ、DJやテクノ、アヴァンギャルド、メインストリームのポップスまでありとあらゆる音楽のファンがいるけど、そのいろんな要素が『La Di Da Di』には含まれてる。聴けばどこかは、楽しめるところが見つけられると思うんだ」
──民族音楽だったり、ジャズの残響を感じることもできますよね。あとは、アグレッシブな音のカタマリが襲ってくるのに、同時にクスッと笑ってしまう瞬間もある。独特のユーモアセンスも、『La Di Da Di』では全開だなと。
ジョン「うん、それはすごく大事。つねに狙ってます」
──ジョンさんのドラミングも、前作以上にメロディックに感じました。日本語だと「歌心」って言うんですけど……。
ジョン「おお、本当? それはすごく嬉しいな」
──攻撃的に攻めつつ、それこそユーモアが伝わってくるドラミングが、『La Di Da Di』には詰まっていたなと。何か特別に意識したことは?
ジョン「ご存じのようにバトルズのビートの中心にあるのは、イアンとデイヴィッドの作りだすループ音源なんだ。ライブではドラムセットの後ろに『ループ・アンプ』が設置されていて。そこからリアルタイムに出てくるループ音に対し、僕がリアルタイムで生のリズムを乗せていく。つまり『一定のビートを刻む』というドラマーの役割はループが果たしていて、僕はそれに対して生のドラムで多彩なビートを付け加えていくんだよね」