──たしか『Dross Glop』の制作時は、スタジオに7ヶ月も泊まりこんだんですよね。「ほとんど制御不能なプロジェクトになってしまった」と。
ジョン「その通り(笑)。ただ、最初からストイックな音を目指していたかというと、そうではなくてさ。バトルズはいつも、アルバムを作る際にはまったく新しいものを創りだそうと全力を注いでいる。今回の『La Di Da Di』もそこは同じで、最初からヴォーカルを省くと決めてたわけじゃないし、もちろんファーストアルバム『Mirrored』(2007)以前の音作りに戻ろうとも思ってなかった。3人で意見をぶつけ合い、試行錯誤を重ねる中で、自然とこういうインストゥルメンタルになったいった。僕らにとってアルバムのサウンドというのは、つねに結果なんだよ」
──ただ、アルバムという形式へのこだわりは相変わらず強いのでは? 本作を聴いても、個々の楽曲が独立した個性を持っていると同時に、52分で1つのカタマリになってぶつかってくるように感じます。
ジョン「うん、それは大いにあるね。現代はダウンロードであれサブスクリプションであれ、聴き手が自在に曲の並べ方を選べる時代だろう。要は楽曲というものがバラバラに切り離され、『アルバム』というトータルなアートの形式が失われつつある。でも僕らは、今でもその時代遅れの形式が好きなんだ。バトルズのアルバムはすべて、最初から最後まで通して体験してもらうことを前提に作られているし。必然的に曲順だって1週間かけて慎重に決めている。そもそも僕らはポップバンドじゃないし、シングルはもちろん12インチのリミックス盤も出さないからね(笑)。だからラジオでかかることも少ない」
──1曲ずつ取り出して聴いても楽しいけれど、やっぱりアルバム1枚まるごと体験してこそ真価が伝わってくると。
ジョン「少なくとも自分たちではそう意図しているよ。こんな時代だからこそ、アルバムというトータルな体験を重視する姿勢を貫こうと。でもさ、もしかしたら、今後ますますストリーミングが主流になることで、アルバムという表現形式が復権するかもしれないよね。要は、スキップできないようにして、アルバムを頭から聴かなきゃいけないように設定すればいいわけだから(笑)。ま、やろうと思えばね。ちょっと皮肉な話ではあるけれど」