American Harpars Bazaar / Ben Hasett
――Ayamiさんにとってメイクアップの一番の魅力は?
Ayami「私はやっぱりモデルにメイクをする、ファッションの撮影でメイクをすることですね」
――表現。
Ayami「そう、ファッションの一部としてメイクをやってる感覚。アートベースのメイクとか、自分のやりたいことをやる。それは一般の方を綺麗にするということではないですね。だからメイクアップ自体に興味があるのではないのかもしれない。
モデルってやっぱりフォトジェニックなんですよ。スタジオで会ったら『ええっ、この子?』っていう人が、写真ではすごくよかったりする。今風の顔というか、一般の方が見たら綺麗じゃないのかもしれないけど、ファッションの中ではその顔が流行ってるというのもある。だから一般の人に私がモデルにやってるようなメイクをしても似合わないかもしれないし、それを似合わせようとするとまた別の努力をしないといけないのかもしれないけど、モデルの顔は白紙なのでそういうことを省略して自分のアイデアを表現できるんです。私はやっぱりモデル、セレブリティもやってますけど、アーティストとかそれ以外は興味ないです。クリエイティヴな、ファッションとしてのメイクに興味があるんっだと思います」
――ちなみに、クリエイターにはある瞬間に自分の頭の中で思ってることを表現出来るようになる瞬間が来ると思うんですが、Ayamiさんにもそういう瞬間ってありましたか。
Ayami「パリコレに参加してアシスタントになったのは、そういう理由からなんですよね。技術的に未熟で思ったことが出来ないというのを解消したかった。こなしていくうちに出来るようになってきたけど、プラス自信もあると思います。私生活が上手くいってて自分に自信がある時はエネルギーがあるから人も巻き込めるし、人がいればやりやすいからメイクも上手に出来る。気になることがあるとクリエーションにはすごく響きますよね。ちょっとやそっとのことで影響されないように自分自身がもっと強くならないといけない。そういう意味でエージェンシーに入ってサポートしてもらうのは大事なことだと思うし、自分が本当に集中出来る環境を自分で作っていかないと。私が技術的な意味でいろんなことが出来るようになったと思えたのは、ランキンとの本が大きいです。200パーセント満足する形で終わらせることが出来たことが自信になった。やりたいことが本当に出来た、という」
――ロンドンでのご活躍を経て2年前にNYに移られましたが、それはどうして?
Ayami「NYは将来行ってみたいと思ってたんです。7年前にマリアーノがNYに引越して、私も仕事で行くようになって。ビザも取ったし、仕事で行って帰ってくるぶんにはなんておもしろくて素敵なところなんだろうと。それで行きたいという気持ちが高まって5年くらい悩んだ末に引越しを決めました。でもマリアーノは残念ながら、ロンドンの方がいいって帰っちゃったんですけどね!(笑)」
――NYに移って広がったことはありますか?
Ayami「仕事はやりやすいです。ウェルカムな雰囲気があってすぐに入れるし、倍くらい忙しくなりました。ロンドンも行ってるけど、アメリカ内も、ソチ方面やモロッコも行ってて。カリブ海に行くことも多くなった。パナマやドミニカンなど、今まであまり出てこなかった国に行くことが増えました。それも面白いですよ。ロンドンは20年も住んだから、ちょっと変えたいなというのもあったし。国を変えるのはすごくエネルギーがいるんですけど、アーティストのためにはいいんじゃないですか? またいろんなことを学ぶというか、知らなかったことを覚えていって。5、6年は絶対住んで、それから合う合わないも決められばいいと思う」
――昨年は京都造形大で講師も務められましたね。
Ayami「1年だけの客員教授で、実際に行ったのは一度ですが。その後は人間を使っての写真撮影で、そのテーマと出来あがったものをSkypeで話しながら私に送るというプロジェクトでした。学校を訪れた際は1時間半のトークで、その後デモンストレーションをやることになっていたんですが、準備に時間が足りないんじゃないかと思って、前日から行って校舎の中を見せてもらって。コスチューム科というところなんですが、面白い作品がいっぱい見つかったので、ぜひそれをメイクに合わせて選びたいというアイデアが出てきたので、デモンストレーションでは実際そうして4パターンを披露しました。本番はオープンセミナーみたいな感じで外部の人も含め130人の前で、1時間半ピッタリ話しました。自分にしては上出来だったんじゃないかな。その後にはバンクーバーのファッション学校でも講義を行いました」
――教えるということは京都造形大が初の試みだったんですよね。
Ayami「はい。今までは自分のショーの時にアシスタントの前でデモンストレーションをやるくらいですが、そういうのは大好きで。私はアシスタントの教育にはすごく興味があるし、サポートしてあげたいというのはあるんですけど、それの延長で、若い学生とかに会ってみたいなと。そしてもし私が言ったことでその若手の人たちが実際やるようになって、もっと後から、そういえばあの時こんなことを言っていたなって思い出してもらえたら面白いんじゃないかなって。本当は人前で話すのは苦手なんだけど、自分から苦手なことをやってみたい、シャイな自分を克服したいところもあって。怖いけど、もしもちょっと何かが変わるんだったら自分のためにもなるから。自分のインセキュリティと戦ってるっていうか、自信の無さをブチ壊して、もう少しずついろんなことをやって強くなっていきたいんです。そして最終的に理想の自分になれたらと思います」
ーー自信がないからゆえに強くなろうと。
Ayami「そうかもしれません。でもなりたい自分になるには、やるしかない。失敗しながらもやっていくしかないと思います」
企画・取材・文 桑原亮子/edit & interview Ryoko Kuwahara
Ayami Nishimura
日本出身。1993年に渡英。1998年よりメイクアップアーティストとしてのキャリアをスタート。雑誌「Dazed & Confused」はじめ、「Vogue」「Another Magazine」「Purple」など錚々たるメディアで活躍。写真家ランキンとコラボレーションした『Ayami Nishimura by Rankin』を2012年に出版。数多くのファッションショーのメイクも手がけている。
Born and raised in Japan, Ayami moved to London in 1993. Self-taught, Ayami developed her own style which is edgy and graphic whilst honouring classic beauty. In 1998 she began her career as makeup artist, since then she has been working on high profile editorial and commercial projects, predominately within the fashion & beauty industry. Her first break came when she started to publish her works on Dazed & Confused magazine. Since then she has been constantly working on leading titles such as Italian, Japanese, Chinese, Russian Vogue, Teen Vogue, American & UK Bazaar, Self Service, Another Magazine, LOVE magazine, Purple, i-D, NUMERO, V and 10 Magazine.
In 2007 she met Rankin – photographer and also publisher of Dazed & Confused, Another Magazine and Hunger. The two started to collaborate on numerous beauty shoots and pushed the boundaries and possibilities of makeup. Their first collaborative book on beauty, “Ayami Nishimura by Rankin” was published in July 2012 in London and LA, August in Tokyo Diesel Gallery. This fabulous beauty book has been a remarkable success, it is now considered the bible for young makeup artists.
Ayami has also worked on many fashion shows include Emilio De La Morena, Nasir Mazhar, Peter Pilotto, Christopher Raeburn and Pam Hogg for London Fashion Week, Paris Haute Couture for Dutch avant garde designer Iris Van Harpen, Aganovich in Paris Ready to Wear, Men’s Fashion Week in Milan and Paris including Missoni, Acne, Marni, Qasimi and Iceberg.
Ayami has been working with many other photographers including, Ellen Von Unwerth, Venetia Scott, Albert Watson, Solve Sundsbo, Laurie Bartley, Sean & Seng, Jason Kibbler, Mariano Vivanco, Miles Aldridge, Tom Munro and Matt Irwin.
Ayami now divides her time between New York and Europe.