Vogue Japan / Sebastian Mader
――メイクアップのベースは、美容学校やサスーンで学んでいたんですか?
Ayami「いや、全くなかったです」
――じゃあ本当に独学なんですね。
Ayami「そうですね。最初の頃は雑誌に載っているメイクをなんとか真似をしようとして全く違うことになってしまった、みたいなことの繰り返しでした。そんな感じで5、6年やってたら、一応少しずつ出来るようになってきたんです。でもある日、もしかして自分が全然間違ったメイクをしているんじゃないかとすごく不安になって、誰かがやっているところを見たくなったんです。その頃ロンドンファッションウィークにはアシスタントとしてちょっとずつ入るようになっていたんですが、パリに行ってもっと大きなショーをやっている大御所のメイクを見たいと思いついて、夜行バスに乗ってパリに行って、知人に頼んで1週間泊めてもらいました。そこでエージェンシーに電話してまわったんですが、全然何も起こらなくて駄目なのかなと思ってたら、1箇所だけオランダのエージェンシーで、『エリス・ファースというアーティストがいるんだけど、FENDIのショーが決まったから今アシスタントを集めてる。ポートフォリオを送ってください』と言われたんですね。すぐに送ったけど返事が無かったから何回も電話して。そしたら、エリスが『出来なくてもいいからそういう熱心な子が欲しい』と言ってくれて決まりました。ショーでは緊張して全然力を出せなかったんだけど、エリスはすごく良かったと言ってくれて。そのFENDIをきっかけにエリスは売れっ子になってCHANELなどたくさんのショーを手がけるようになったので、私もそのチームに入ってパリやミラノに毎回行くようになりました。それでアシスタントが面白くなってきて、もっと大きなショーを見たいと思ってステファン・マレーに連絡したら、たまたまタイミング良く新しいチームに変えるためにアシスタントを探しているところで、ポートフォリオを見せたら気に入ってくれたんです。ステファンは、CHANELはエリスと戦ってたけど、LANVINやJean Paul Gaultierなどたくさんショーをやっていて、そこから彼のショーには全部ついていきました。エリスのショーにあまり行けなくなってモメたんだけど、ステファンの方が良かったんです。彼は学校の先生みたいに優しくて、いろんなことを学びましたね。化粧品もたくさん貰ったり、面白かったですよ」
――エリスとステファンの違いをもう少し詳しく聞かせてください。
Ayami「うーん、エリスはアイデアが奇抜で、出来る時は思いきったことをやるんだけど、ステファンはクラシックでしたね。綺麗で丁寧。エリスはすごく速くて、10分くらいでワーッとやっちゃうんです。ステファンはもっと時間をかけて、本当に綺麗に仕上げる。一度私がメイクをやっている時に、ステファンが『もうちょっとこうやってみたら?』って半分だけ直してくれて。そしたら突然モデルの目がバンッと大きくなったからビックリして、すごい、やっぱり違うなって感動しました。そこから3年くらいアシスタントについて。当時はアシスタントのフィーもすごく良かったし、エージェンシーに入りながら10年くらいアシスタントをつとめている人たちもざらだったんですが、私は3、4年やったら小さくてもいいから自分のショーをロンドンでやっていきたいと思っていたので辞めました」
L:Italian Vogue / Ellen Von Unwerth R:NUMERO China / Laurie Bartley