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『ピンクとグレー』行定勲×後藤正文×山田貴洋(ASIAN KUNG-FU GENERATION)インタビュー

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後藤「僕自身の経験から言うと、『疾走感』と言われたときに求められてるものって、ある種『内省的なロック』であることが多いんですよ。例えば『自分って何だろう』とか『アイデンティティって何なんだろう』とか…。いわば自分の内側に向けた言葉とビート。その意味は山田くんが書いてくれた、イントロから前半にかけての展開はすごくいいと思った。ノイジーで激しい導入部分とか『うん、間違ってないぞ』と。と同時に、この内省的な感覚をどっかで引っ繰り返さなきゃいけないとも感じたんですよね」

山田「うん、そう。そうなんだよね」

後藤「映画のタイトルは『ピンクとグレー』ですけど、この楽曲についてはむしろ反対で。何だろう……真っ黒なところから始まったものが、展開部のミドルエイトのあたりからちょっとずつ明るさを増して灰色に変わっていって、最後には真っ白になってる──みたいな感覚かな?」

山田「だと思う。黒のイメージの前半から、楽曲のトーンが白へと引っ繰り返っていく。その中でいかに疾走感を表現するか。2人の間でも特に話はしなかったけど、その感覚は同じだった気がする」

後藤「通常“Jロック”的な手法だと、サビの後どうしても前半部に戻りたくなるんですよ。ただ僕ら、最近のモードだと無理に展開を付けるのがあまり好きじゃなくて。なるべくシンプルなリフだけで最後まで押し切ってしまう、洋楽的なやり方の方がしっくりくる。日本のポップスでも、例えば山下達郎さんなんかはそうですよね。曲の頭からいきなりサビがあって、次にそれをちょっと展開させたBメロがきて。延々その繰り返しだったりするのに、すごく豊かな音楽になっていて」

行定「本当にそうだよね」

後藤「まぁ、僕らはその域にはまだ全然達してなくて。同じことをやると骨格しか残らなかったりするんですけど(笑)。少なくともこの曲については『Aメロがあって、Bメロがあってサビがきて、また最初に戻る』みたいな定型スタイルは、あえて外しています。そもそも行定監督の映画そのものが、前半と後半で異なる色合いをしていて。そこが『ピンクとグレー』の肝だったりするし。だったら楽曲の入口と出口とでまったく違う印象になっていてもいいんじゃないかなと」

山田「あと、2015年に『Wonder Future』っていうアルバムをリリースしたことも大きかったかもしれないですね。僕らにとってあの作品は、自分たちなりのシンプルな8ビートロックを見直すという意味合いも強かった。その直後にいただいた仕事だったから、こういうシンプルなリフが生まれた部分もあったと思う」

後藤「もちろん僕なりには、ちゃんと“Jロック”的な展開も入れてますよ(笑)。前半と後半のコントラストが鮮明で、パッと聴いた印象的はむしろ、久しぶりに派手だと思うし。ただ、やっぱり山田くんが最初に、黒をイメージできる硬質なリフを書いてきてくれたのは大きかった気がします。そのキーとかコードを用いつつうまくずらしたりして、全体を仕上げていった感じですね」

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