2015年は、ペトロールズの1stフルアルバム『Renaissance』がリリースされた年として記憶されるべきだ。“文芸復興”を意味するタイトルを冠した本作は、三角形の紙製ジャケットに収納されたディスクに全11曲が記録されている。その音楽性も、パッケージも、リスナーへの届け方も、大衆音楽としてのポップミュージックである以前に、純然たる芸術としての音楽作品であるという発想のもとにクリエイトされている。8月13日にスタートした全国ツアー「Renaissance」の初日から会場でリリースされ、まずは最新のペトロールズのライブを体感したオーディエンスの手に渡り、その後、順次流通を広げていった。刹那的な結果を追い求める産業至上主義とは真逆にある音楽とリスナーの関係性。その先にあるものこそが、『Renaissance』=ルネサンスの萌芽になるとペトロールズは信じている。
ベースの三浦淳悟(通称“ジャンボ”)とドラムの河村俊秀(通称“ボブ”)が担うリズムのアプローチはファンクを筆頭にあきらかにブラックミュージックから派生しているが、それだけにとらわれない奥行きと行間、揺らぎがある。そこに長岡亮介の独創性しかない歌メロやギターフレーズが、夜の帳が下がった空間でひとりの男が官能に身を任せる直前の瞬間や曇りなき純情を愛らしい叙情で照らす筆致で描かれたリリックを引き連れて、躍動する。ペトロールズの比類なき音楽が発する、豊潤かつ濃密な刺激、色気、諧謔が融和した快楽。触れてもらえば、それがどれほどたまらないのか、わかるでしょう。2015年の最後に、ペトロールズのメンバー全員インタビューをお届けする。
――初めてのフルアルバムってどういう感覚ですか?
三浦「今までの作品はレコーディングが終わると子どもが巣立っていくような感じで、あまり繰り返し聴いたりすることはなかったんだけど。でも、この『Renaissance』はよく聴いてるんですよ」
——クルマに乗ってるときとか?
三浦「そうそう。やっぱりフルアルバムというボリュームがうれしいのかな。4、5曲だとすぐに終わっちゃうしね。でも、『Renaissance』は曲順もハマってるし、シンプルに言うと、とても気に入ってます!(笑)」
一同「(笑)」
——このアルバムを聴くと、バンドが10周年で1stフルアルバムを作ったことがすごく自然に思えるというか。
三浦「うん。べつに出し渋っていたわけでもないし」
——誠実に音楽と向き合った結果として、このタイミングになった。
長岡「そうそう、そうなんですよ。10周年で1stフルアルバムを作るってなんらおかしいことではない。いや、おかしいか(笑)。気負わないで作れてよかったですよ」