例をあげると、お腹が不調で手をそっと部位に当てるとする。この時、外側である手ばかりを意識すると、うまく気が入っていかないことが多い。この時の意識は外から内へである。一方、お腹の側に立って、添えられた手を身体の奥から外へと意識の流れを逆にして見るようにすると、お腹がぽかぽかと温かくなり、気が良く流れるようになる。意識を手にではなく、腹に置く。この違いは歴然で、セルフヒーリングの時には、必ず内から外への子供の意識で行うといい。
これは、人は自ら治ろうとする整体の視点だからこそ気付けた例だと思う。外から治療を受けるという視点とは逆に、内側から自ら治ろうとする回路を開くのだ。
人の体はより快適に過ごそうとする回路があり、それはあくびや伸びや寝返りなどのように自動的に行われている。またそれが必要ならば、歪みとなって現れることもある。悪い姿勢になることによって、全体としてより悪くなることを回避している場合もある。病気においても、胃潰瘍になることで胃がんを回避していることもあるので、病気すら整体的視点では、経過するものとして行き止まりではないとしている。人はなるべくして病気を選ぶこともあるのだ。
日常において大切なのは、気がより多く流れる状態にしてあげること。それによって健康のために必要なことが自発的に心身に起こってくれる。気が多く流れるようにするには、整体的な立場による運動や歪みの除き方の方法が整えられている。これらはきっと続ければ良いに違いないが、いくら健康にいいことでも続けるのは難しい。せめて小さな毒出しやストレスリリース法の一つ二つを思い出した時にできるようにしておきたい。
また、歪みや病気、アレルギーなどの症状は、人間の病というよりも、その時代特有の社会の仕組みなどが人間の健康に映された姿でもあるので、社会そのものを変えるのは難しいが、それとどうストレスなく付き合うかということを意識しておくのも、病気を回避することに繋がるだろう。
まずは、内側から外側への子供の意識を時々持つこと。好きなように世界を見ること。外側の世界とバランスをとることばかりでなく、内側の自分と折り合うこと。それこそが整体なのだと思う。
(つづく)
※『藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」』は、新月の日に更新されます。
「#25」は2016年1月10日(日)アップ予定。