この身体の拒みを専門的に扱うというのが、整体の一般的なイメージだと思う。骨をカックンと押したりしてくれるカイロプラクティックのようなものとして認知されていると思うのだが、実際このような一般的な整体を受診してみると、背骨や腰の歪みを、ぐいぐいっと直してくれる。受診前後で自分の身体を鏡に映して比べてみれば、生まれ変わったように、その差が一目瞭然で、人間の身体の奥深さに驚くばかりだ。だが、常に整体院に通わないといつの間にか元に戻ってしまうのが、身体というものだ。生き癖が、身体の歪みとして現われているのだから、そもそもその癖を直さないことには。
そういう骨カックンなものとは別に野口整体というのがあって、ざっくり言うと、気を通し整えることで、身体のバランスを良くしていくというものだ。今回はこのカックンではない整体について語ろうと思うので、以後整体と記すものは、この野口整体の側のことだとする。
創始者は、明治44年生まれの野口晴哉さん。17歳(!)で設立した「自然健康保持会」を経て、45歳で整体協会を設立した療術界での巨人として知られる方。
その教えを簡単にいえば、前記の通り、気を通すことで正しい身体バランスを整えていくということなのだが、その実際方法として、気を通す「愉気」、無意識に身体がバランスをとろうとして勝手に動いてしまう「活元運動」、身体の個人差を野口整体的な視点から分類した「体癖」が基本となっている。紙幅上、それぞれについて詳しくは専門書などを見ていただきたい。(「整体入門」野口晴哉著・ちくま文庫、など)
野口整体の病気に対しての基本的な考え方は、いわゆる代替療法全般の存在意味そのままでもあり、自分もベースで影響を受けたのだが、それは、「病気は治すものではなく、治るもの、経過するもの」という考え方だ。
前記の「愉気」「活元運動」「体癖」は、自分の身体が本来持っている治る力を、主に気を使って高めていくための方法であり、日常的に実践することで、心身ともにバランスがとれた朗らかな日々を送れるとされる。
また整体師片山洋次郎さんによれば、著書「整体から見る気と身体」の中で、整体とは「人間が成長して老化して死ぬプロセスで、本来はスムーズにいくのを邪魔している何かを取り除く技術」としている。気の良く流れている状態が、よく生きている状態だと、片山さんは語り、気とは、生を一番元で駆動しているエネルギーだと説明している。
気そのものを語るには、紙幅が足りないので、まずはとても大切な目に見えないエネルギーだと認識してもらえればいいと思う。
ちょっとここでまとめると、整体というのは、カイロプラクティックな面だけでなく、気という存在を中心に考え、気が多く流れる健康な心身へと整えることを目指している、ということになる。また、そのためには野口整体では、愉気、体癖、活現運動などを取り入れたりしている。他の整体でも独自に様々な方法があるが、いずれも身体が自ずから良くなろうとする目覚めを促すことを目的としている。
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