“オーストリアのモナリザ”と称えられ、国の美術館に飾られてきたグスタフ・クリムトによる名画〈黄金のアデーレ〉を巡る実話を映画化した『黄金のアデーレ 名画の帰還』。メガホンをとったサイモン・カーティス監督に、ストーリーの魅力や撮影中のエピソードをインタビュー。加えて、今回初めて訪れた東京への印象なども訊いた。
――本作は、オーストラリアの美術館に飾られてきた名画〈黄金のアデーレ〉は、伯母の肖像画であり、第二次世界大戦中にナチスに略奪されたもの。「正当な持ち主である自分に返してほしい」と、オーストラリア政府を訴えた実在する女性・マリアと、彼女の裁判を弁護した駆け出し弁護士・ランディの物語です。
「とても情熱を感じる主題です。ロサンゼルスに住むホロコーストの生存者が人生の終盤に差し掛かり、オーストリア政府から彼女の家族が所有していた絵画を取り戻すことを決意する、最近の出来事と過去の出来事を描いたストーリー。この映画を実現するために、夢のようなキャストを起用することができて本当に幸運でしたね」
――主役のマリアにはヘレン・ミレンさんがキャスティングされていますね。
「ヘレンと一緒に仕事をするのは光栄でした。僕は映画監督をするまえに演劇業界で仕事をしていたのですが、そこでの最初の仕事が、彼女が主役を務めたシェークスピア劇『尺には尺を』の演出助手だったんです。彼女は最高の仕事仲間。役に入り込むし、毎日、彼女がカメラの前でどんなことをするのかを見るのはエキサイティングでしたね」
――ランディ役のライアン・レイノルズさんは、どういった経緯でキャスティングを?
「キャスティングの過程でライアンに会って、一目で気に入ったんです。彼はとても頭の切れる男。ある意味では、本物のランディ・シェーンベルクとはタイプの異なるキャラクターですが、2人とも頭がいいという点は同じ。それと、共感的な優しさを持っている点も共通しています。ライアンはランディ役にぴったりだと思いましたね」
――実話を映画で描くことについては、どんなふうに考えていますか?
「多くの人は、本当にあった話に、より興味があるのかなと思っています。最近は特に、『英国王のスピーチ』や『ソーシャル・ネットワーク』といった事実に基づいた作品が成功していますよね」
――どんなことを考えながら撮影に挑まれていたんですか?
「特権的で、ありがたいと思いました。マリアとランディに対する称賛の気持ち、尊敬の気持ちを常に持ちながら、この映画を世の中に出せるということが非常にラッキーだなと」
――苦労したシーンや特に大事に撮っていたシーンはありますか?
「すべてのシーンが大変でしたが、特にマリアが自分の両親に別れを言うシーンは、感情的にも大変でしたし、撮影にも苦労した思い出があります」
――撮影中のハプニングや、印象的な出来事は?
「いろいろあったんですが……(笑)。本作は2つの時代を舞台にしたストーリーです。なので、9時にドイツで撮影していたかと思えば、同じ日に移動して、時差があるのでアメリカで17時にほかのシーンを撮っていて……。いったい僕は今どこにいるんだろう?と思ったことが印象的です(笑)。最終的には、3つの国の3つの都市で撮影したので、とてもチャレンジングでしたが、すごくエキサイティングでもありましたね」
▼プロフィール
イギリス生まれ。ロンドンとニューヨークで舞台演出家として活躍したのちに、テレビシリーズ『クランフォード』などを監督。2011年公開の映画『マリリン 7日間の恋』で長編監督デビューを果たした。
▼作品情報
黄金のアデーレ 名画の帰還
監督:サイモン・カーティス
脚本:アレクシ・ケイ・キャンベル
出演:ヘレン・ミレン、ライアン・レイノルズ、ダニエル・ブリュール、ケイティ・ホームズ ほか
11月27日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
(C)THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015
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