——『MASHED PIECES #2 』でも、当時はまだ流行の入り口だったベースをテーマにしていましたね。
G.RINA「ベースミュージックは、先述のドラムンベースしかりUKのものをずっと追ってきていたので、歴史もふまえて楽しんでます。それとはまた別に音楽シーンの先っちょの方で蠢いている音楽には昔から強い興味があって、そこに影響を受けるのは、自分では自然な流れなんですよね。それに、ジャンルが開かれて、交差してる感じが面白いんです」
——今の音楽シーン全体の風通しの良さが、音楽的な自由に繋がっている感じがありますね。新人もベテランも関係ないっていう。
G.RINA「それが楽しいですよね。刺激的です。日本だけじゃなく、まだ無名でもユニークなビートメイカーは結構チェックしてる方かなと思います」
——その「ユニーク」を具体的に言葉にするとどうなりますか?
G.RINA「自分の好みで言うと、ただ変わってる、ただアバンギャルドなだけじゃなくて、そこにポップ・センスがあるものに、やっぱりピンときますね。実験的過ぎず、新しいものと、オーソドックスな価値観ーーそれは『ポップス』って事にも通じると思うんですけどーーを上手くミックスしてるような人が、やっぱり気になりますね」
——人に聴かせる音楽であるかどうか、という。
G.RINA「それは絶対に必要な要素だと思いますね」
——では「『Lotta Love』について話を伺うと、制作期間はどれぐらいでしたか?
G.RINA「具体的なアルバム制作という意味では、結構ギュッと作りました。最終締め切りから考えると、3ヶ月前ぐらいですね」
——それは相当タイトですね。
G.RINA「活動を半ば休んでいた時期も、曲作りはしてるんですよ。でもパーツは作るけれど、フィニッシュさせられないというか。そういう、最終形にまでは至らないデモやパーツが、いっぱい溜まってて。今回アルバムを作るって決めて、こういうコンセプトで、こういう内容で、こういうゲストで、っていう外側を決めたら、その内側を埋めていくには何が必要かが見えて、そこからの制作はスピーディーに進んだ感じです」
——今回は80年代的ブギーやディスコ、ニュー・ウェーヴ、90年代的なクロスオーバーしたブラック・ミュージックがコンセプトになっている作品だと感じましたが。
G.RINA「そうですね。そのエッセンスを入れながら、そのままではなく、どうしたら今の音、じぶんらしい作品が作れるかなって。自分のルーツは、80年代的なブギーやディスコ、90年代ではヒップホップやR&Bになるんですが、そういった音楽は結構、様式美の部分があると思うんですね。昔は、そういった様式美に自分を寄せていく事にスゴく抵抗があったし、もっと独自性を追求したいと思っていたりして。でも、キャリアを重ねるうちに、そういったルーツの部分と、自分の個性みたいなものが重なる絵が見えたっていうか。それを併せた作品が今なら出来るかもしれないって思ったんですよね」