——曲のネタはあったんだ?
古舘「去年出した弾き語りのアルバム(『僕が唄っている理由』)に入ってる曲を基にセッションしました。2人のリズムの上でギターを弾いて歌うのがすごく楽しくて。超一流のプレイヤーである2人が僕の曲を弾いてくれることもすごくうれしかったし。自分の曲ではないような感覚になるくらい楽しかったんです。で、それからマネージャーが加藤くんを連れて来てくれて」
——加藤くんとの付き合いは長いですよね?
古舘「はい。むしろマネージャーと加藤くんより、俺と加藤くんのほうが仲がいいくらいで。加藤くんのバンド、ポニーテールスクライムは学芸大メイプルハウス(ライブハウス)出身のすぐ下の後輩なので。10代のころから半分ライバル、半分友だちみたいな感じ付き合っていて。で、加藤くんも含めた4人でメイプルハウスを借りて音を合わせるようになったんです。そのときの僕はまだブレブレだったので、僕のただの友だちを連れてきて、そいつにパーカッション係としてコンガを叩かせたりして(笑)」
——(笑)。それは「熱帯夜のコト」の元になるような曲で?
古舘「そうです、そうです。いろんなことが麻痺してたから、雄太にコーラスをやらせたりとか、メイプルハウスがカオスな状態になってました。でも、中尾さんとオータさんがいるから、ちゃんと進行はするんですよ。そこから7月くらいにようやくレコーディングができることになって。でも、レコーディングに入ってからが地獄でしたね」
——どういう部分で?
古舘「僕のやりたいことが定まってなかったので。ピアノやホーンを入れたいんだけど、僕はこれまで幼なじみとしかバンドをやったことがないので、他のミュージシャンの方たちと音楽的なコミュニケーションをちゃんととったことがないんですよね。ピアノやホーンのミュージシャンの方たちはスタジオには来れなくて、メールでアレンジのやり取りしたんですけど。僕、メールや事務作業が苦手なので。それですごく疲れちゃって」
——ピアノやホーンのアレンジは先方にお任せしたんですか?
古舘「僕のイメージを先方に投げてすり合わせしてという感じですね。ソロの大変さを知りました。レコーディング前日までに5曲しかできてなくて、最後の最後にできたのが1曲目に入ってる『タンデロン』なんですけど」
——これが最後だったんだ。むしろ最初に作った曲なのかなと思った。この曲がいちばんSALOVERSの面影が強く残ってるから。
古舘「そうですね。この曲にはピアノやホーンも入ってないし、いちばんバンドっぽい曲なので。最後の最後に作ったから、時間がなくて自分らしさみたいなものがモロに出たんだと思います」
——終わった青春のその後という感じの曲ですよね。SALOVERSの背中に手を振ってるというか。
古舘「今までは照れくさくてそういうことを考えるのも、言うのもヤだったんですよ。でも、それこそSALOVERSの最後のライブのときもほとんどそういうことは言わず、超淡白に終わって。でも、こうやってバンドが終わってから半年くらい経って冷静になると、照れててもしょうがないなと思うようになって。きれいごとかもしれないけど、そう思ってしまったからにはがんばらないとなって」
——これは古舘くんの作家性だと思うんだけど、他の曲の歌詞も追憶にふける内容が多いですよね。
古舘「確かにそうなんですよね。それを必死に抑えようともしたんです。でも、『ああ、また過去のことを書いてる』って結局なるんですよね」
——ただ、「熱帯夜のコト」はどこか官能的な筆致で。こういう歌詞を書けたのもよかったですよね。
古舘「この曲の歌詞を書いてるときはSALOVERSでは書いてないことを書こうという思いが強かったので。僕としては、今回の作品を作って、次の作品にすでに気持ちがいってるんですよね。早く作りたいです」