——乗り気じゃなかったけど、ケツを叩かれ、物事が動き出していくうちに徐々に音楽に対する情熱が戻ってきたんですか?
古舘「戻っちゃったんですよねえ」
——戻っていいんだよ(笑)。
古舘「自分のなかで音楽活動は戦場みたいな感覚があって。いろんなミュージシャンの方々が戦ってる世界。そこにSALOVERSは早い段階で入っちゃって、いろいろ試行錯誤しながら傷だらけになって戦場から離脱したんですよね。SALOVERSが無限期限の活動休止になって、僕も戦場からかなり遠い場所に行った。3月、4月、5月までは。そのときは二度と戦場には戻りたくないって正直思っていて」
——素直な気持ちとしてそう思っていた。
古舘「完全に思ってましたね」
——音楽から離れて自分の人生をどうしようと思ってたの?
古舘「休んでるときに伊豆にある断食道場にも行ったんですよ」
——へえ(笑)。
古舘「そこで3日間くらい断食したら、エネルギーが有り余っちゃって。帰り際に注意事項みたいなのを読んだら、『断食明けはエネルギーが放出するので、活動が活発になります。がんばりすぎないでください』みたいなことが書いてあったんですね。終わったあとホントにエネルギーが漲っちゃって、音楽はしたくないけど、何かしたいと思って、もつ焼きとかを始めたんですよ」
——は? 何それ。
古舘「もつ焼きの仕込みを覚えて、知り合いのカフェでもつ焼きを客に出すということをやって。もつ焼きの修行みたいなこともして」
——……(笑)。
古舘「それがすげえ楽しかったんです」
——もつ焼きを生業にできたらいいなと思ってたの?
古舘「それも本気で考えたんですけど、結局こうやってソロ作品を作って、もう1回戦場に戻りたいって思ったんですよね」
——戦場で音楽を鳴らしたいと。
古舘「そうです」
——やっぱり古舘くんは私小説としての歌を書いて、それをバンドサウンドで歌わざるを得ない人なんだと思うんですよね。その歌を人に聴いてもらいたいという欲求も消えないし。
古舘「そうですね。SALOVERSをやっていた動機もそこだと思います。それをあのメンバーと一緒にやることが大きくて。そういう動機の矛先がなくなるとやっぱりつらいんだなって。今回もレコーディングが終わってからリリースを待ってる時間が暇でつらいんですよね」
——今回のソロ作品は、中尾憲太郎氏、オータコージ氏、加藤綾太氏というメンバーがバンドサウンドを担ってますけど、このメンツはどのように集まったんですか?
古舘「まず、前にSALOVERSのプロデュースをしてもらったことがある中尾さんに会いに行ったんです。2人でお茶をしながらいろいろ話して。僕、中尾さんにはホントのことしか言わないんですけど、今思い返すとけっこう頭のおかしいことを言ってるんですよね」
——というと?
古舘「大先輩の中尾さんに『まだソロ活動をやる気はないんですけど、とりあえずベースを弾いてください』って言ってたんですよね(笑)」
——「は?」っていう(笑)。
古舘「そう。『今唯一決まってるのは、中尾さんにベースを弾いてもらうことなんです』って。でも、中尾さんはそれを喜んでくれて『やりたいことが決まってないならとりあえずスタジオに入ろう』って言ってくれて」
——優しいね。
古舘「ホントに。それでドラムはどうしようってなったときに中尾さんが『紹介したい人がいる』って言ってくれて、オータさんを紹介してくれたんです。オータさんとは一度お会いしたことがあったくらいでほとんど話したこともなかったんですけど、高校時代に曽我部恵一BANDが大好きでよくライブを観に行ってたので。SALOVERSのドラムの藤川(雄太)はずっとオータさんに憧れていて。それから3人でスタジオに入って、SALOVERSではやってなかった曲をその場でセッションすることから始まって」