――しかも、彼女の音楽は、未来的でエレクトロなサウンドにノスタルジックでアコースティックな感覚が同居しているところも非常に特徴的ですよね。そんなコンピューター・マジックの音楽はどこから生まれるんでしょうね?
ダンジー「意図して、ノスタルジックな音楽を作ろうとしているわけじゃないのに、自然とそういうものが生まれるということは、例えば、ビートルズだったり、子どもの頃に聴いてた音楽の暖かみが無意識的に反映されているのかもね」
川上「楽器を習わずに、音楽を作り始めたとか?」
ダンジー「そう。以前はDJだったんだけど、DJ活動から距離を置こうと一時的にフロリダにいる母と一緒に住んでいたんだけど、その生活が退屈だったから、エイブルトンっていう音楽ソフトをダウンロードして、それで遊び始めたの。そして、作ったものを母に聴かせたら、『楽器が出来ないのに自分の耳だけを頼りに音楽が作れるなんてすごいわね』って。そこで初めて、自分でも『音楽を作るセンスがあるのかも』って思ったんだけど、当時は技術的なこともよく分からないまま曲を作っていたの」
川上「オーソドックスにギターを習ってから音楽を作り始めた僕からすると、技術にとらわれず、自由に曲を作る彼女は格好いいと思います」
ダンジー「音楽を教わらなかったから、当初はコードを弾く時、それが何の音か分からなかったんだけど、ポジティヴに捉えれば自由な表現に繋がっているのかもね」
川上「DJだったということで、聴く音楽はイギリスの音楽とアメリカの音楽、どちらが好きですか?」
ダンジー「両方とも! 高校の時はイギリスの音楽にハマってて、今でも大好きなカイザー・チーフスやアークティック・モンキーズを聴いていたんだけど、私が16歳の時、彼らが初めてアメリカでツアーをしたの。その時、フィラデルフィアのショーを観に行ったんだけど、車で連れて行ってくれた母が会場の外で待っててくれたのをよく覚えてるわ」
――バンド音楽がお好きだったんですね。ちなみに[Alexandros] の最新アルバム『ALXD』はいかがでした?
ダンジー「特に好きだったのは、2曲目の「Boo!」ね。あの曲にはアナログなサウンドが使われているでしょ?」
川上「そう、あの曲ではアナログのシンセサイザーを使っているんですよ」