——今回、ドレスコーズのニューアルバム『オーディション』にもコウキくんが参加してますね。
志磨「今まで話してきたことにも繋がりますけど、今年の自分の音楽としてレコードに記録したいのは、音楽における自分と演奏者の関係性で。演奏者の影響によって自分がどのように変わるのか、それを音源として録音するべきだなと思ったんですよね。それで、僕が作った曲をいろんな人に演奏してもらうということで、今年に入ってからライヴに参加してもらったメンバーのギタリスト全員にアルバムでも弾いてもらいたいと思ったんです」
コウキ「アルバムタイトルの『オーディション』は、様々なミュージシャンが参加していることがかかってるんですか?」
志磨「うん、かかってる。で、おもしろいのがね、Auditionの“Audi”と“Audio”の“Audi”って綴りが一緒なんですよね。つまり、音楽を再生する装置がオーディオシステムで、作品をどういうミュージシャンと一緒に実演して作るかを人選するのがオーディションで。でね、僕がこのアルバムをリリースしたときにお店で他の作品と並んだら、今度は僕がオーディションにかけられるんですよ。いっぱいあるCDのなかから選んでもらわなきゃいけない」
コウキ「そういう意味では、僕らは常にオーディションを受けてますね」
志磨「そう、オーディションをかけ、オーディションにかけられてる。その選択の積み重ねを経て、今日ここにいるという。そこで何か間違えていたら今日ここにいないかもしれない」
——この夏、OKAMOTO’Sと一緒にライヴしたのも選択のひとつだし。
志磨「そう、OKAMOTO’Sと一緒にやってなかったら、僕の今後の音楽が全然違うものになるかもしれない」
コウキ「僕が参加させてもらった楽曲は激しめのサウンドになりましたね」
志磨「そう。いっぱい作った曲の中でコウキに弾いてもらうならこれかなという曲を選んで」
コウキ「ライヴでは今まで志磨さんと一緒にやってきたギタリストのことを考えたりもしましたが、今回は真っさらな新曲を弾くということで、意識が違いました。曲をどうよくするかに集中できた。自分の地も出せましたし」
志磨「デモには一応、僕が弾いたギターを入れましたけど、でもコウキには『好きに弾いて』と言って」
コウキ「結果的に志磨さんと一緒にやるから云々ということは深く考えずに、自分が弾きたいように弾けたのでよかった」
志磨「素と言えばさ、『ハーフムーン』は、あれもコウキの素なの?」
コウキ「あれも素ですね。だから、『ソロアルバムを作ってください』と言われて自由に曲作りしたらああいう楽曲が12曲くらいできると思います。『ハーフムーン』は最初アルバムに入れる気はなかったんですけど、周りの人たちがすごく気に入ってくれて。レイジも『入れたほうがいいよ』と背中をおしてくれたんですよ」
志磨「いい曲だよね。コウキは、実は声がいいっていうね」
コウキ「いいですか!?」
志磨「うん。歌い手としてすごくいいと思う」
コウキ「うれしい。すごく細い声なんですけどね」
志磨「僕のなかでコウキの声は、キャロルでいうと永ちゃん(矢沢永吉)ではなく、ジョニー大倉のイメージなんだよね。技巧的な感じではなくて、サイドマンとしてたまに歌うときに声のよさが際立つ。その感じが好きなんだよね」
コウキ「うれしいです。小山田圭吾さんの声に似てるとよく言われます」
志磨「ああ、確かに似てる!」
コウキ「フリッパーズ・ギターの曲をカラオケで歌うと再現性が高いんです(笑)」
志磨「声が90年代っぽいんだよね。ちょっとフィッシュマンズの佐藤(伸治)さんっぽさもあるし」