——なるほど。聖域に触れるような感覚。
コウキ「そう、ファンとしての。ただ、演奏にはすごく自信があるし、一緒にやったらいいライヴができるという確信も同時にありました。だから喜んでお引き受けしたんですけど、同時に少し怖さもあって」
——他の3人はどうだったんですか?
コウキ「ノリノリでしたね。少しは僕と同じように志磨さんをリスペクトしているがゆえの不安もあったとは思いますが、夏フェスで共演するという内容もおもしろかった。志磨さん、実際どうでした?」
志磨「これは他の誰でもなく僕自身がミュージシャンとして知りたいこと、追求したいことがあって。ひとりの男がバンドをやることによって、どうなってしまうのか。そのロマンやストーリーにおいて、昔から僕はソロで活動しようと思ったことがないんです。ソロアーティストやシンガーソングライターをやりたいと思ったことがなくて。いろんな方法があると思います。ひとりになって宅録をやってもいいわけだし。でも、やっぱり僕はバンドをやりたい。でね、そのうえでOKAMOTO’Sと一緒にやると僕もOKAMOTO’Sのメンバーになるんですよ」
コウキ「OKAMOTO’Sの人になっちゃったんですね(笑)」
志磨「そう。それがいちばんおもしろかった。この夏の野外フェスティバルの僕のライヴは、OKAMOTO’Sのライヴだと思うんです。だからライヴ自体がダンサブルやし、すごくハッピーなものになった」
コウキ「今回、ショウも一緒にやりましたからね。その影響もあるかもしれない」
志磨「そうそうそう。僕はショウさんにもいてほしかったの。それはね、決して『ショウさん以外のメンバーでお願いします』って言うのが気まずいからじゃなく、OKAMOTO’S全員のなかに入りたかった」
コウキ「なるほど」
志磨「自分がOKAMOTO’Sに入ったときにどうなるか知りたかった。そしたらやっぱり予想通りだった。僕がOKAMOTO’Sのメンバーになったんだよね」
コウキ「確かに演奏もOKAMOTO’Sでしたね」
志磨「そうそう。で、最初にOKAMOTO’Sと一緒にやったROCK IN JAPAN FESのあとにある人に言われたんです。『志磨くんはライヴ中にあんなに笑っちゃダメだよ!』って(笑)」
コウキ「僕もカメラマンの人に『すげえいいライヴだったけど、志磨さんが楽しそうだったからダメ!』と言われて(笑)」
志磨「ダメなのかな?(笑)」
コウキ「ダメみたいですね(笑)」
志磨「でもね、僕としてはそんなことはどうでもいいんです。それくらい変わるというおもしろさがあるから」
——OKAMOTO’Sのなかに入ったからこそ自然と笑顔になったし。
志磨「そう。ひとりの男としてバンドをやっているなかで、演奏者が違うとこれくらい変わるということですよね。だから、たとえば僕がムスッとライヴをやっているイメージがあるとしたら、それは僕が前に一緒にバンドをやっていた人たちの影響なんです。だから、『笑ってないほうがいい』って言われるとビックリするの。普段はこんなにヘラヘラ生きてるのに、ライヴのときはそう見えてるんだって。バンドってそういうものなんですよね」
——それは共同体としての人格が出ると。
志磨「そうそう、そういうことですね」
コウキ「その話にはすごく納得できるところがありまして。これは最初の2本のライヴで解決したんですけど、自分たちがOKAMOTO’Sとして演奏すると、志磨さんのエッジの立った部分が削られてしまうのではないかと思って」
志磨「そうなのかね?」
コウキ「やっぱりどうしてもハッピーなバイブスが出る。べつに僕たちが常日頃楽観的に生きている人間ではないんですけど、やっぱりライヴ全体のムードとしてそうなるんです。そのうえで自分たちが夢中になって見てきた志磨さんは、エッジの立った部分がカッコいいと思ってきた。だから、楽しいけど複雑、みたいな気持ちが少しありました」
志磨「そっか、そっか。この前、レッドクロスと名古屋でドレスコーズとOKAMOTO’Sの対バン企画があったんですよ。『60分一本勝負』と題して、まずOKAMOTO’Sがライヴをやって、転換なく僕がそのなかに入ってマリーズやドレスコーズの曲をやるという。そのとき思ったのは、僕のそういうエッジーな部分だったり、スタジオワークを凝ってやる音楽青年的な部分をOKAMOTO’Sの4人は知ってくれているわけで。だから、レッドクロスでOKAMOTO’Sとライヴをやるというのは隠しごとが何もない感じというか」
コウキ「特別な感じでしたね」
志磨「だから、もし僕のエッジーな部分が残っているとしたら、それをOKAMOTO’Sは感じてくれるやろうし。あのとき久しぶりにライヴハウスでめちゃくちゃやった気がするんですよ。セットリストも一緒に考えたんですね。OKAMOTO’Sは初期の曲を中心にやると。で、僕は最近やってなかったマリーズ時代のうるさい曲を久しぶりに歌って『こんなのやってたんだ!』って自分で思って。そういう状況のなかでOKAMOTO’Sは当時の僕を知ってる証人なわけだから、僕がヘニャヘニャしてたらたぶんバレちゃってたと思う。そういう意味でもすごくおもしろかった。あのね、とてもいいですよ、OKAMOTO’Sは」
コウキ「ありがとうございます。僕らもすごく楽しかったです」